妊娠・出産でかかるお金はいくら?必要な費用と受け取れる助成金は?手続きや制度を紹介
妊娠が判明してうれしい反面、出産までにどれくらいお金がかかるのか不安に感じることもありますね。妊娠・出産費用の助成制度を利用すると、お金の負担が大きく変わってきます。ここでは、安心して赤ちゃんを迎えるために知っておきたい制度や手続きについてご紹介します。
本ページはプロモーションが含まれています
目次
意外と多い!妊娠・出産に必要なお金は?
妊娠が判明してから赤ちゃんが生まれてくるまでのあいだには、普段の生活にかかるお金とは別の費用がかかります。妊娠・出産の経過は人それぞれのため、ケースごとにかかる費用をあらかじめ確認しておくと安心です。
項目 | 金額 |
---|---|
妊婦健診費用 | 1回の健診で5,000円〜2万円、総額で約8万~10万円が目安(ほとんどの自治体で助成あり) |
分娩・入院費用 | 全国平均:53万8263円(公立と私立病院とでは4.5万円ほど差がある) |
帝王切開の医療費 | 予定帝王切開が20万1,400円、緊急帝王切開が22万2,000円(健康保険が適用される) |
切迫早産の医療費 | 長期入院となることもあり場合によって50万~100万円以上(高額療養費制度の対象) |
マタニティ、育児用品の準備費用 | 10万円が目安(揃えるアイテム、品質により差があり) |
里帰り費用 | 1ヶ月で2~3万円が目安(実家と相談) |
産婦健診費用 | 1回あたり5,000円前後(産院により異なる) |
以下で妊娠・出産に必要なお金の各項目を詳しく見ていきましょう。
妊婦健診費用
妊婦健診はママと赤ちゃんの健康を確認するための健康診査です。厚生労働省では出産までに14回程度受診することを推奨しています。妊婦健診は健康保険が適用されない自費診療にあたり、助成を受けなければ全額自己負担となります。
妊婦健診は初診料、再診料、妊婦健診料の基礎的な費用のほかに、超音波検査、血液検査(初期・中期・後期)、子宮頸がん検査、培養検査(初期・中期)、NSTなどの検査費がかかります(※1)。
料金は病院や検査内容により異なりますが、1回の健診で5,000円から2万円、総額で約8万~10万円が目安です。現在はほとんどの自治体で妊婦健診の助成が受けられるため実際に支払う金額はその一部に抑えられているので、妊娠が判明したら自治体に確認してみると安心ですね。
分娩・入院費用
令和4年度の出産費用は、全国の平均で54万5,797といったデータがあります。公立と私立病院との費用の差を見てみると、4万3,000円ほどの開きがあるといえるでしょう。
費用には入院料、分娩料、新生児管理保育料、検査・薬剤料、処置・手当料、室料差額、産科医療補償制度、その他が含まれます(※2)。室料差額、産科医療補償制度、その他を除いた出産費用の全体平均は48万2,294円 です。
出産方法や医療機関の分類によって金額は異なり、規模が大きく高度な医療も提供できる病院では70万~80万円ほどかかる場合もあります。
令和3年度 | |
---|---|
入院料 | 118,326円 |
分娩料 | 282,424円 |
新生児管理保育料 | 50,052円 |
検査・薬剤料 | 14,739円 |
処置・手当料 | 16,753円 |
室料差額(a) | 17,441円 |
産科医療補償制度(b) | 11,820円 |
その他(c) | 34,242円 |
総計 | 545,797円 |
総計-(a)-(b)-(c) | 482,294円 |
※全施設の全国平均
帝王切開の医療費
帝王切開には逆子や多胎妊娠などであらかじめ日程を決めて行う予定帝王切開と、分娩中に異常が生じて緊急時に行われる緊急帝王切開があります。帝王切開の分娩料は診療報酬により決められており、予定帝王切開が20万1,400円、緊急帝王切開が22万2,000円です(※3)。
帝王切開は医師が必要だと判断したときに行われる医療行為のため、健康保険が適用されます。3割の自己負担額で実際の分娩料は約6万円になります。ただし、常位胎盤早期剥離や切迫早産など複雑な処置が必要な場合には、2万円が加算されると考えておきましょう。
自然分娩と比べ、帝王切開の入院費用は5~10万円ほど高くなるのが一般的なようです。予定帝王切開などで医療費が高くなることがわかっているときは、加入している保険組合の高額療養費制度を利用できるよう早めに確認できると良いですね。
切迫早産の医療費
切迫早産と診断されると安静、内服薬の服用、点滴などの治療が行われます。症状によって、自宅での安静か入院かが選択されます。入院期間や治療法は症状で異なりますが、月単位の長期入院となることもあり場合によって50万~100万円以上の入院費がかかります。
切迫早産の治療は保険が適用されるため、高額療養費制度の対象です。この制度を利用すると所得に応じて自己負担限度額が設定され、限度額以上に支払った分が払い戻されます。あらかじめ医療費の一部負担金が高額になったときのための「限度額適用認定証」を自治体の担当窓口に申請しておけば、自己負担限度額以上の支払いが不要になります。
高額療養費の自己負担限度額は所得によって設定されています。標準報酬月額が28万〜50万円の場合、80,100円+(総医療費-267,000円)×1%で計算できます。保険適用分の医療費が100万円と想定すると、負担額は87,430円です。これに食費や保険適用外の検査などが加算された費用が実際の支払い額と考えておいてくださいね(※4)。
マタニティ、育児用品の準備費用
ママのマタニティウエアや、産後の子育てに必要な育児用品を準備する費用も必要です。産前産後のママに必要なアイテムだけでもマタニティ用のショーツ、ブラジャー、マタニティウェア、授乳服などがあります。産褥ショーツや骨盤ベルトなども用意しておいても良いでしょう。
赤ちゃんが使うものには肌着、カバーオール、おくるみ、おむつ、抱っこ紐、ベビーカー、チャイルドシートなどがあります。ベビーバスやベビーベッドなど使う期間が限られているものは、レンタルを検討する方も少なくないようです。
何をそろえるか、どれほどの品質のものを選ぶかで費用は大きく変わりますが、最低限必要なアイテムをそろえるのに必要な金額は10万円を目安に考えておくと良いかもしれません。マタニティやベビー用品専門店の西松屋やアカチャンホンポなどでは、手ごろな価格で必要なアイテムがそうためさまざまな店舗を見比べてみても良いですね。
里帰り費用
実家に里帰りして出産する場合は、交通費や生活費を予算に入れておくと良いでしょう。分娩予定の医療機関によっては、予約時に受診が必要なことがあります。出産間近に慌てないようにも、出産までに何回受診が必要かを確認しておくことをおすすめします。
親元に滞在する場合でも、食費や光熱費などの生活費を謝礼として用意しておくとお互いが気持ちよく過ごせるといった先輩ママの体験談もありますよ。相場は1ヶ月で2~3万円といわれています。パパや実家と相談して金額を決めておくと、出産時も両親に気兼ねなく甘えることができるかもしれませんね。
産婦健診費用
出産後はホルモンバランスや生活リズムが大きく変わります。慣れない新生児の育児をサポートしママの身体の回復状態を確認するために、厚生労働省では市区町村に対して産後2週間と産後1ヶ月の時期に産婦健診を行うよう推奨しています。
産婦健診では問診、診察、体重・血圧測定、メンタルチェックなどが行われ、授乳や育児に関する悩みも相談できます。1回あたりの費用は産院によって異なりますが、おおむね5,000円前後が相場のようです。
※産婦健診…産後のお母さんの体調や授乳、育児の状況を確認するために行う健診
妊娠・出産でもらえるお金は?
あわせて、妊娠・出産でもらえるお金も確認しておくと安心です。
項目 | 金額 |
---|---|
妊婦健診費用助成 | 助成額は全国平均で約10万円(ひとりあたり14回分の妊婦健診受診票(補助券)が交付される) |
産婦健診費用助成 | 母子手帳交付時に産婦健診受診票が発行(まだ新しい制度のため助成を行っていない自治体もあり) |
出産育児一時金 | 妊娠4ヶ月以上で出産した場合、子どもひとりにつき原則50万円支給(令和5年4月に42万円から50万円に引き上げ) |
出産手当金 | 女性が出産のために会社を休んだとき、勤務先の健康保険から支給 |
育児休業給付金 | 健康保険に加入する人が、1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した際支給 |
出生時育児休業給付金 | 育児休業給付金に属する制度で、産後パパ育休を取得した場合に支給 |
傷病手当金 | 健康保険に加入する人が、切迫流産や切迫早産の治療のために病気休業する場合に支給 |
以下で、妊娠・出産でもらえるお金を詳しく紹介します。
妊婦健診費用助成
妊婦健診はほぼすべての自治体で公費による助成が受けられます。助成額は全国平均で約10万円です。一般的に、ひとりあたり14回分の妊婦健診受診票(補助券)が交付され、病院での支払いの際に受診票を提出する仕組みとなっています。
地域や検査内容により、全額補助される場合と1回あたり1,000円~1万円ほどの負担が発生する場合があるので各自治体の補助金額を確認しておくと安心ですね。一部の自治体では全額自己負担で支払い、後日払い戻し申請をして助成を受ける方法がとられています。
自治体をまたいで里帰り出産をする場合は、里帰り先の医療機関では妊婦健診受診票による助成が利用できなため、後日住んでいる自治体への還付申請が必要です。利用していない妊婦健診受診票、里帰り先で受診した際の領収証などをそろえておくように気を付けましょう。
産婦健診費用助成
産婦健診も妊婦健診と同じように、母子手帳交付時に産婦健診受診票が発行されます。産婦健診事業は平成29年度に始まったもので、令和2年度の時点で助成が受けられる市区町村は全体の約半数程度と、助成を行っていない自治体も多くみられます。
住んでいる自治体で助成が受けれられるか、受けられるとしたら上限額はいくらかなど、詳しい内容について自治体や医療機関で確認してみると良いでしょう。
出産育児一時金
出産育児一時金は、勤務先の健康保険に加入している人やその扶養に入っている人が、妊娠4ヶ月以上で出産した場合に、子どもひとりにつき原則50万円が支給される手当です。令和5年4月に支給額が42万円から引き上げられました。(※5)
公的機関からの手当といえば、直接自分たちの口座に振り込まれるイメージですね。しかし、出産育児一時金は通常と異なり、入院している医療機関が健保組合に申請し、一時金の受け取り先となる直接支払制度を利用するのが一般的です。
この制度を利用すると退院時の請求額は医療費から出産育児一時金を差し引いた分となり、支払いの負担が抑えられます。たとえば請求額が52万円だった場合、支払額は50万円を引いた差額の2万円となります。
ほかにも自分で健保組合に申請して医療機関に受け取りを委任する受取代理制度や、出産後に全額自己負担で医療費を支払ったあと健康保険組合に自分で申請して支給を受ける方法があります。医療機関によって対応している制度が異なるため、事前に支払方法を確認しておけると良いですね。
出産手当金
出産手当金は女性が出産のために会社を休んだときに、勤務先の健康保険から支給されます。支給額はおおむね給料の3分の2相当になり、支給日額×日数で計算できます。支給日額は、標準報酬月額の12ヶ月平均を30日で割り、3分の2をかけると算出できます(※6)。
支給の対象となる条件は、健康保険に加入していること、休んでいるあいだ給与の支払いを受けていないことです。支給の対象となる期間は出産日以前42日間から出産の翌日以降56日までの範囲内です。実際の出産日が出産予定日より遅れても、超過分が加算されて支給されます。
受給には給与締日以後に、出産のために休んだ日の翌日から2年以内に健保組合への申請が必要です。申請書類には医師や助産師、事業主が記入するページもあるため、手続きや支払いのタイミングについてあらかじめ健保組合に確認しておくと安心ですよ。
育児休業給付金
育児休業給付金は雇用保険に加入する人が1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した際、一定の要件を満たした場合にハローワークに申請して支給される給付金です(※7)。育児休業対象は男女を問わないため、パパが育児休業を取得した際も対象となります。
支給対象期間は育児休業開始日から子どもの1歳の誕生日の前々日までの期間で、2回までの分割取得が可能です。支給額は休業開始時の賃金日額×休んだ日数×67%で計算されます。
ただし、支給日数が育児休業を開始してから通算して 181 日目から給付率は50%となり、休業中に賃金が支払われている場合も給付率が変わります。政府は給付率について80%まで引き上げる考えを示しており、今後の動向が注目されます。
出生時育児休業給付金
出生時育児休業給付金は育児休業給付金に属し、2022年10月に施行された「産後パパ育休(出生時育児休業)」を取得した際、一定の要件を満たした場合に支給されます。
産後パパ育休は子どもの出生後8週間以内に4週間まで育休を取得できる制度で、給付金の支給対象となるのは原則として男性です。支給額は育児休業給付金と同じく、休業開始時の賃金日額×休んだ日数×67%で計算されます。
申請期間は子どもの出生日から8週間を経過する日の翌日から2ヶ月を経過する日が含まれる月の末日までとあまり猶予がないので注意が必要です。
傷病手当金
切迫流産や切迫早産の治療のために病気休業する場合は加入している健康保険から傷病手当金が支給されます。手当は会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降休んだ日に対して支給されます(※8)。
支給額は出産手当金と同じくおおむね給料の3分の2相当となり、支給日額×日数で計算できます。出産手当金と傷病手当金は同時に支給されず、原則として出産手当金のみが支給されます。ただし出産手当金よりも傷病手当金の額が多い場合は調整が入り、その差額が支給されます。
妊娠・出産で出費が減るお金もある?手続きは?
一方で、妊娠・出産で出費が減るお金もあります。手続きなどを確認しておくと、いざというときに安心ですよ。
項目 | 金額 |
---|---|
国民年金保険料 | 第1号被保険者が出産する場合、出産予定日または出産日の前月から4ヶ月間、国民年金保険料が免除される |
健康保険・厚生年金保険料 | 事業主が年金事務所に申し出ることにより、産前産後休業期間の健康保険・厚生年金保険の保険料が免除される |
医療費控除 | 出産にともなう費用は、確定申告の際に医療費控除の対象となる |
以下で、妊娠・出産で出費が減るお金を詳しく紹介します。
国民年金保険料
第1号被保険者が出産する場合、出産予定日または出産日の前月から4ヶ月間、国民年金保険料が免除されます(※9)。多胎妊娠の場合は出産前後6ヶ月が対象となります。免除を受けるには、住民票がある自治体の国民年金担当窓口への届け出が必要となります。
健康保険・厚生年金保険料
事業主が年金事務所に申し出ることにより、産前産後休業期間の健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます。産前産後休業期間は産前42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後56日のうち妊娠・出産を理由に休業していた期間です。
将来的に保険料を計算する際にも免除期間は保険料を納めたものとして扱われるため、年金が減額されることはありません(※10)。
医療費控除
出産にともなう費用は、確定申告の際に医療費控除の対象となります。定期的な妊婦健診や検査費用、入院時の食事代などが医療費控除の対象です。通院のための交通費も医療費控除の対象となるものがあります。出産育児一時金が支給された場合は、医療費から差し引いて目安を計算してみてくださいね。
妊娠・出産に関するお金は事前に整理しよう
妊娠・出産にはまとまったお金が必要になるうえ、申請手続きが必要なものも少なくありません。わからないことは自治体の窓口や保健所に相談し、利用できる制度や手続き方法について確認しておきましょう。
手続きには時間がかかることもあるため、余計な出費を増やさないためにも早めに調べておくと安心です。ママが動けなくなったり、パパが手続きをしなくてはいけなかったりする場合に備え、パパとママが一緒に情報を共有しておけるといざというときに安心ですよ。
※この記事は2024年3月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。