法務省と厚労省が「内密出産」のガイドラインを策定!内密出産・匿名出産とは?

2021年12月に日本で初めての内密出産が行われたのを契機に、これまで法的な根拠がなかった内密出産や匿名出産に関して議論が進められてきました。2022年9月には、関係する法務省と厚生労働省が連携し、ガイドラインを策定しています。ここでは、全国の自治体に通知された内容について紹介します。

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目次

  1. 匿名出産・内密出産とは?
  2. 熊本市の慈恵病院が受け入れを表明
  3. 法務省と厚労省「内密出産」のガイドラインを策定
  4. 内密出産・匿名出産について考えよう
  5. あわせて読みたい

匿名出産・内密出産とは?

内密出産

「内密」には表沙汰にしない、内々で済ませるという意味があります。「内密出産」とは、出産を受け入れる医療機関の一部の人だけに妊婦さんの身元情報を伝えて出産する方法です。

妊婦さんの身元情報は、原則として自治体や親族に知らされることはありません。ただし、子どもが自分の出自を知る権利については考慮する必要があり、将来的に子どもが開示請求を行った場合、母親の身元情報を閲覧できるような体制が求められています。

また、内密出産に関して政府は、児童福祉の観点から身元情報を明らかにした上で出産することが望ましい考えを示しています。内密出産を希望する妊産婦に対しては、自治体から適切な支援を届けるとともに、身元を明らかにするための働きかけが行われています。

匿名出産

一部の人に身元情報を伝える内密出産に対し、自分の身元をまったく明らかにすることなく医療機関にて出産することを匿名出産といいます。匿名出産で生まれた赤ちゃんには、内密出産で生まれた赤ちゃんと同じ支援が届けられます。

社会的な背景

生まれてきた小さな命を尊び、懸命に守り育てているママやパパは多いことでしょう。ところがとても悲しいことに、実の母の手により小さな命が絶たれる事件は後を絶ちません。

警察庁のデータによると、2020年(令和2年)に児童虐待により死亡した子どもの数は61人、そのうち出産直後に殺害された赤ちゃんは11人にのぼります(※1)。法務省の調べでは、こうした行為におよぶ割合は実父よりも実母のほうが高いことが判明しています(※2)。

母親が犯罪にいたる背景のひとつとしてあげられるのが、予期せぬ妊娠・出産を誰にも相談できない孤立した環境です。周囲から孤立した妊産婦をできるだけ早期に支援することが、赤ちゃんの命を救うことにつながります。医療機関による匿名出産と内密出産は、その受け皿のひとつとして考えられており、議論が進められています。

熊本市の慈恵病院が受け入れを表明

母親がひとりで子どもをうむ「孤立出産」を避けるため、日本国内で唯一の赤ちゃんポストを運営する慈恵病院(熊本市)が、2019年に内密出産の受け入れを表明しました。2021年12月に日本で初めての内密出産が行われ、2022年9月までに7人の内密出産を受け入れたことが明らかになっています。

赤ちゃんポストとは?仕組みや現状の問題点、海外の取り組みについて

法務省と厚労省「内密出産」のガイドラインを策定

日本国内には内密出産について定めた法律がなく、慈恵病院での事例から出生届の提出、戸籍の作成、特別養子縁組などについて、法的なよりどころが必要とされてきました。そこで、法務省と厚生労働省では2022年9月に内密出産に関するガイドラインを策定し、全国の自治体に通知しています。

ガイドラインでは、内密出産が行われた場合に想定されるプロセスについて9項目でまとめ、関係機関に対応を求めています。

9つのプロセス
1.内密出産を希望する妊婦から、受け入れ先の医療機関に相談
2.子どもの出自を知る権利の重要性や出産前後に得られる支援などについて、受け入れ医療機関から妊婦に対して説明し、身元情報を明らかにした上での出産について説得
3.妊婦が身元情報を明らかにすることに同意しない場合、受け入れ医療機関における仮名等での診療録等を作成
4.出産
5.医療機関から母親に対し、身元情報を明らかにした上での出生届提出を催告
6.母が出生届を提出する意向がないことが確認された場合、受け入れ医療機関から管轄の児童相談所に要保護児童の通告
7.児童相談所から管轄の市区町村に対し、戸籍作成に必要な情報を提供
8.市区町村長による戸籍作成
9.医療機関、市区町村、児童相談所間で連携し、要保護児童に対応

内密出産・匿名出産について考えよう

今回取りまとめられたガイドラインでは、母子に適切な支援を提供するためにも身元を明かして出産することが原則という立場を示しており、決して「内密出産」を推奨するものではないことが明記されています。

予期せぬ妊娠、子どもを育てられない不安に対し、行政や医療機関はさまざまなサポートを実施していますが、同時に社会全体で孤立出産が増えないよう意識を高めていくことが必要なのかもしれません。子どもに対しても、正しい性の知識や命の尊さについて伝えていきたいものです。

※この記事は2022年12月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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