授乳中のおっぱいに「しこり」!?授乳中も乳がんになるの?|産婦人科医監修

授乳中におっぱいが張ることがありますよね。張ったおっぱいに「しこり」を見つけると「乳がん」の可能性が頭をよぎり、心配になるママも多いことでしょう。授乳中に乳がんになることはあるのでしょうか。ここでは、授乳中の乳がんについて、医師監修の記事で解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. なぜ授乳中にしこりができるの?
  2. 乳腺のつまりと乳がんのしこりの違い
  3. 授乳中にマンモグラフィーは可能?
  4. 授乳中の乳がん検査は必要?
  5. もし授乳中に乳がんになったら
  6. 授乳は乳がんリスクを低下させる
  7. おすすめの「乳がん」に関する本
  8. リスクは低いといえ、健康な生活を心がけよう
  9. あわせて読みたい

なぜ授乳中にしこりができるの?

「胸のしこり」と聞くとドキッとしてしまうママもいるかもしれません。授乳中のママたちのなかには、胸のしこりを気にしている方が多いようです。

授乳中には、ときどきしこりのようなものを感じる場合があります。多くの場合は「乳瘤(にゅうりゅう)」と呼ばれる乳汁がたまっている状態である可能性が高く、乳がんであることはめったにないようです。

また、おっぱいにしこりがあり、痛みや腫れ、熱を帯びた感覚があるときは、「乳腺炎」かもしれません。乳腺炎は、おっぱいの母乳をつくる部分(小葉)や母乳が通る管(乳管)に母乳がたまってしこりができ、悪化すると発熱やリンパ節の腫れといったインフルエンザのような症状を伴うことがある病気です。

乳腺のつまりと乳がんのしこりの違い

乳腺のつまりが原因のしこり

乳腺のつまりが原因でしこりが生じる場合は、おっぱいが張って強い痛みが出たり、局所的に熱を帯びて赤く腫れたりする点が特徴です。また、乳腺炎によるしこりについて、固さが変化しやすい、触ると動きやすい、と感じる人もいるようです。

しこりだけでなくおっぱい全体の状態を確認することで、乳腺炎かどうかの見当をつけやすくなるでしょう。

乳がんが原因のしこり

乳がんが原因でしこりが生じる場合は、おっぱいの張りや熱感、赤い腫れといった乳腺炎の症状の特徴があらわれない可能性が高いといわれています。乳腺炎の症状が少ないにもかかわらずしこりがある場合には、乳がんの可能性を考慮しておくと良いかもしれません。

しかし、乳腺炎と乳がんのもっとも大きな違いはがん細胞が原因かどうかであり、症状で簡単に判別できない場合もあります。自分で病気を決めつけず、病院に相談しましょう。

副乳が原因のしこり

おっぱいの横、脇の下あたりに、左右にある通常のおっぱいとは別にできるおっぱいのことを「副乳」と呼びます。女性の5%程度にみられ、生理周期にしたがって通常のおっぱいのように張りや痛みが出る場合があります。乳腺の組織が発達してくると中に母乳がたまってしまい、痛みを伴うしこりができることもあるでしょう。

目立ちすぎたり、症状が重かったり、副乳の部分に悪性の腫瘍ができたりした場合には、手術で切除することが考えられます。気になるときは病院を受診してください。

授乳中にマンモグラフィーは可能?

「授乳中の乳がんのリスクが低くても心配」というママもいることでしょう。授乳中に乳がんの検査を受けることはできるのでしょうか。胸のしこりが「乳がん」かどうかを検査するには、マンモグラフィーという検査が必要です。

授乳中は乳腺の濃度が高く映るため、腫瘍があってもはっきりわからない場合があります。このため、超音波検査による診察を行いますが、実際に早期の乳がんを見つけ出すのは難しいといわれています。乳がんは赤ちゃんの授乳が終わった後に、おっぱいマッサージなどによって飲み残しの乳汁を出し切らなかったことが理由だと聞いたことがある方もいるでしょうか。実際には、ほとんどは自然に吸収されてなくなってしまいます。

授乳中の乳がん検査は必要?

妊娠中に乳がん検診を推奨する医師は、約6割を占めるのに対し、授乳中の検査を推奨する医師は4割程度です。「乳腺の発達によって詳しく検査が行うことができない可能性がある」という点が大きいようです。授乳中でも「乳がんに罹患するリスクが高い」と判断された場合には、検査が推奨されるようですが、一般的には「授乳中は無理に受ける必要はない」という考え方の方が多いようです。

もし授乳中に乳がんになったら

授乳中のママが乳がんになる確率は、乳がん患者全体の1%程度といわれており、それほど確率は高くないようです。仮に授乳中に乳がんになったとしても、授乳は可能です。「母乳を介して赤ちゃんに影響を与えることはない」ということがわかっていますので、この点では安心してください。

授乳は乳がんリスクを低下させる

授乳中の胸のしこりのほとんどは乳瘤(にゅうりゅう)ですが、授乳と乳がんに何かしらの関係はあるのでしょうか。スペインでは、2004年から2009年の間に乳がんと診断された19歳から91歳の504人の女性を対象に、調査が行われた例があります。

「子どもがいない又は授乳期間が3ヶ月未満」「授乳期間が3ヶ月以上6ヶ月未満」「授乳期間が6ヶ月以上」のグループに分類して乳がんを診断された年齢を調べたところ、授乳期間が6ヶ月以上の人の発症年齢は65.4歳と最も遅かったようです。

授乳期間が長いほど乳がんリスクが低くなる可能性があるようです。授乳をすることでママの乳がんリスクを下げてくれているなんて驚きですね。とはいえ、リスクはゼロではありません。授乳中に乳がんになった症例もあるので、しこりが気になる際は、早めに検査を受けることをおすすめします。

おすすめの「乳がん」に関する本

寿命を10年延ばす-「乳がん専門医」の教え
¥880〜(2022/12/08 時点)

発売日:2016年10月
著者/編集:竹原めぐみ
出版社:中央公論新社

リスクは低いといえ、健康な生活を心がけよう

授乳中のママであれば一度は「乳がん」というワードが頭に浮かんだことがあるかもしれません。授乳中の発症リスクは低いようですが、授乳中でも不安を抱くことがあれば、速やかに専門医に相談するのがベストですね。安心して育児を楽しめるように、健康には気をつけていきましょうね。

※この記事は2022年12月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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