【助産師監修】ママの食べ物が母乳の質に影響する?授乳中の食生活のポイントと注意点

産後は、授乳やママの身体の回復をサポートするために、栄養バランスの良い食事を摂ることがすすめられています。そのため、授乳期の食事に気を配るママも多いでしょう。ママの食事がどれくらい赤ちゃんに影響しているのかも気になりますよね。ここでは、ママの食事と母乳との関係や、授乳中に意識したい食生活のポイントを紹介します。

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目次

  1. ママの食べ物が母乳の質に影響するって本当?
  2. 母乳育児中の食事のポイント
  3. 母乳に良い食べ物はあるの?
  4. 授乳中に注意・制限した方が良いといわれているもの
  5. 授乳中の食事に関する体験談
  6. ママがおいしいと感じる食生活を送ろう
  7. あわせて読みたい

ママの食べ物が母乳の質に影響するって本当?

産後の母乳の分泌量は、ママの体質や体調、赤ちゃんの飲み具合によって個人差があります。母乳が出すぎておっぱいが張りやすくて困るママもいれば、思うように母乳育児がすすまず、ミルクを使用して混合育児をしているママもいるでしょう。

ここでは、母乳が出る仕組みや、ママの食べ物が母乳に影響するのかを紹介します。

母乳が出る仕組み

出産後に母乳が出る仕組みについては、4つのホルモンが大きく関わっています。

・プロラクチン:乳腺組織を発達させ母乳を作る
・エストロゲン:乳腺の発達を促すと同時に母乳を作る働きを抑える
・プロゲステロン:妊娠中に母乳が出るのを抑える
・オキシトシン:オキシトシン反射という作用がはたらき、母乳が出るようになる

受精卵が子宮内膜に着床すると、エストロゲンとプロラクチンにより乳腺が発達します。出産後には、プロラクチンとオキシトシンの作用により、母乳がたくさん分泌されるようになります。

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母乳の質や量は食事の影響を受けないという考えが主流

乳腺炎の予防や母乳の量を増やすには、和食を中心とした食生活を心がけるよう指導を受けたママも多いでしょう。しかし、乳腺炎や母乳の分泌量とママの食べ物の関係については、医師や専門家によって意見がわかれることがあります。

授乳中のトラブルの代表である乳腺炎。WHO(世界保健機関)によると乳腺炎の原因として明らかなのは乳汁うっ滞のみであるとされています。赤ちゃんのおっぱいの飲み方や不適切な授乳間隔などによって母乳がうまく外に出されず、乳腺内に母乳がたまり炎症をおこした状態が乳腺炎です。つまり、乳腺炎と食べ物の因果関係は明確にはわかっておらず、一概にママの食生活に問題があるとは言い切れません。

また、これまではママの食事が母乳の味に影響するという考え方が一般的でしたが、実のところ母乳の味と食事についての関連を示す明確な根拠は示されておらず、母乳の質や量に関しても、ママの食事の影響を受けないという考え方が最近の主流となっています。

おっぱいトラブルは食事以外が原因になることも

母乳にママの食事が影響しないという考え方が最近の主流とはいえ、たくさん食べ過ぎた後に乳腺炎になったという体験談を聞いたことがあるママもいるでしょう。助産師から、甘い食べ物を控えるようにと指導を受けることもあります。

母乳は血液から作られるため、身体をめぐる血液がドロドロであればそれだけ母乳の流れも滞りやすくなるという考えもあります。そのため、甘い食べ物→血液の流れが悪くなる→おっぱいがつまるといった考えが定着しているようです。

しかし実際には、ママが食べた甘いものが直接おっぱいをつまらせる原因となるわけではありません。例として、甘いものに含まれる脂肪分ですが、母乳中の脂肪分の大きさは母乳が出る管(乳管口)よりもとても小さいため、物理的にママの食べた脂肪分が直接おっぱいをつまらせるといったことは考えられません。

甘いものや脂っこいものを食べておっぱいにトラブルがおきたと思ったときは、普段より授乳間隔が空いていなかったか、赤ちゃんの飲み方はどうだったか、きついブラジャーや抱っこ紐などでおっぱいを圧迫していなかったかなど、違った面からも振り返ってみてください。

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赤ちゃんの様子で判断しよう

一般的に、母乳にアレルギーの元となるアレルゲンが含まれていても、赤ちゃんに影響をおよぼすのはほんのわずかとされています。日本小児アレルギー学会のガイドラインでも、妊娠中および授乳中に母親が特定の食物除去を行うことは推奨されていません。しかし、母乳に含まれる成分に、影響を受けやすい体質の赤ちゃんもいるでしょう。

授乳後に赤ちゃんの状態に異変がみられたら、自己判断せず、医師に診察してもらうことが大切です。授乳後、赤ちゃんに赤い湿疹や蕁麻疹が見られたり、呼吸が苦しそうだったりする場合はしっかりと様子を見守りましょう。しばらくしても症状が治まらない場合は、迷わず医療機関を受診してください。

母乳育児中の食事のポイント

基本的に赤ちゃんに異常がなければ、授乳中はママの特別な食事制限は必要ないとされています。しかし、ママの食事が母乳を通じて、赤ちゃんの成長に影響を与えるのではないかと気になりますよね。

授乳中の食事のポイントを抑えて、食生活のストレスを減らしていきましょう。

バランスの良い食事を心がける

産後のママの身体をサポートするためにも、食事の栄養バランスを意識していきましょう。消化吸収の良い白米などの主食を中心に、不足しがちな、わかめ、こんぶやごぼう・にんじんなどビタミンやミネラル・カルシウムを含んだ副菜を意識的にメニューに加えてはいかがでしょうか。

主食となる炭水化物は、身体に入ると早めにエネルギーに変わります。また、炊いた白米は、水分が多く含まれて消化が良いエネルギー源です。さらに消化吸収を促すために、しっかりと噛むことも意識しましょう。

ハンバーグや魚のフライ・唐揚げなどの主菜は、身体に必要な栄養素ですが、摂り過ぎになりがちなので注意が必要です。母子手帳に記載されている食事バランスガイドを参考にして、赤ちゃんにとってもママにとっても、バランスの取れた食生活を送りたいですね。

授乳中はビタミンAをはじめ、葉酸やビタミンCといった栄養素の必要量が増えます。ビタミンAはにんじんなどの緑黄色野菜に多く含まれています。ベータカロチンを含むマンゴーも、授乳中におすすめの食材です。葉酸やビタミンCを多く含み、食欲がないときでも食べやすいフルーツもそろえておくと良いでしょう。アレンジしやすく冷凍保存もできるマンゴーやアボカドは、母乳をあげているママのお助け食材になります。

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しっかりとカロリーをとる

妊娠中に増えた体重を落とすために、カロリーを抑えた産後ダイエットを考えるママもいるのではないでしょうか。しかし極端なカロリー制限(1日1500kcal以下)は母乳の分泌や赤ちゃんの発育に影響を与えるとされています。

一般的に、母乳100mLは60~70kcalとされています。厚生労働省によると授乳中の女性は、一般的な女性の摂取カロリー(1650~2300kcal)プラス、350kcalほど多めに摂るのが理想とされています。授乳には、それほどカロリーが必要なのですね。

授乳期のママは育児と家事で忙しい時期ですが、カロリーを考えながら食事をすることで、ママの体も健康的に過ごすことができますよ。

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水分摂取をしっかりと

授乳期は、頻繁にのどの渇きを感じるママが多いようです。赤ちゃんは月齢や個人差があるものの、1日に800mL程度の母乳を飲むといわれています。そのため、ママは1日に2L程度の水分を補給するようにすすめられています。

水ばかり飲むのが苦痛というママは、みそ汁やスープで水分補給をしても大丈夫ですよ。また、ノンカフェインのコーヒーや紅茶で一息ついても良いですね。

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カルシウムも適度に

カルシウムは、産後に摂取したい栄養素のひとつです。骨粗しょう症の予防や、健康な骨や歯を作るのに必要な栄養素だと指導を受けたママも多いでしょう。主に、桜えびやチーズ・魚や大根の葉に豊富に含まれています。

母乳中のカルシウムの多くはママの骨カルシウムに由来しています。授乳期は、母乳を通じて赤ちゃんにカルシウムを送るため、生涯のうちで最もカルシウム不足しやすい時期とされています。

女性の身体は妊娠にともなってカルシウムの吸収率が良くなるため、厚生労働省によるとあえて授乳中にカルシウムを多く摂る必要はないとされています。しかしこれは妊娠前の段階でカルシウムを十分にとれていたことが前提です。心配な場合は適度にカルシウムを摂取するように意識しましょう。

頑張り過ぎない 

母乳育児中の食事管理は、ママが頑張りすぎないことが大切です。赤ちゃんにできるだけおいしいおっぱいを飲ませてあげたいと思うあまりに、食生活に偏りが出てしまうママも多いようです。気持ちはわかりますが、母乳育児の基本はママの健康的な身体にありますよ。

授乳中でも、赤ちゃんに異常がない限りは、基本的に通常の食事内容で良いとされています。それに加え、通常の食事より少し多めにカロリーを摂り入れていきましょう。間食は、市販のお菓子ばかりではなく、消化が良く、すぐにエネルギーとなってくれるバナナやおにぎりなどを食べると良いですね。

また、たまにはリフレッシュを兼ねて、パパと外食や出前を楽しんではいかがでしょうか。ママが日ごろの食事に満足することで、少しでも食事に対するストレスを減らすことができると良いですね。

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母乳に良い食べ物はあるの?

日本では、昔から授乳中は和食を中心とした食事が推奨されていますが、食事の内容と母乳の分泌量に明確な関係があるわけではありません。極端なカロリー制限をしなければ、何を食べても母乳の分泌や乳児の発育に影響を与えることはない、というのが今日の考え方です。

授乳中に注意・制限した方が良いといわれているもの

授乳中でも、赤ちゃんに異常がみられない限りは、ママは食事制限や過度なアレルゲン除去をした食事にする必要はないとされています。しかし、授乳後に赤ちゃんに湿疹が現れたり呼吸が苦しそうだったり、また、機嫌が悪かったりする場合は、母乳に含まれる何かしらの物質が赤ちゃんに影響を与えている可能性があります。

赤ちゃんに異変があった場合は、小児科や小児アレルギー科などの医療機関を受診することが大切です。赤ちゃんの異変にいち早く気付くためにも、日ごろからどのような食品に気を付けるべきなのかを紹介します。

7大アレルゲン

7大アレルゲンとは、特にアレルギーをおこしやすい食品をいいます。アレルギーとは、人の身体に入った物質が危険をおよぼすと感知されたときに、皮膚が赤くなったり呼吸が苦しくなったりする免疫のシステムのことです。7大アレルギーは以下の食品です。

・卵
・小麦
・乳
・えび
・かに
・そば
・落花生

特に乳幼児は、「鶏卵」「牛乳」「大豆」など、タンパク質が豊富な食品にアレルギー反応をおこしやすいとされています。ママの母乳から赤ちゃんへ移行するアレルゲンはほんの少しとされていますが、授乳後に赤ちゃんに異変があった場合は、ママがどのような食品を口にしたか思い返してください。

授乳後に、赤ちゃんに蕁麻疹や湿疹が現れたり、呼吸が苦しそうだったりしたときは注意が必要です。赤ちゃんの症状が治まらなかったり悪化する場合は、早急に小児科か小児アレルギー科を受診しましょう。

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刺激物

極度に辛いキムチやカレー、刺激の強いニンニクや生の玉ねぎなどは、母乳ににおいが出る可能性があるといわれています。実際に、キムチを食べたあとや、大量のニンニクなどを食べた後に赤ちゃんがおっぱいを飲んでくれないといった体験をしたママが多いようです。一方でママが何を食べてもまったく変わらずに母乳を飲んでくれる赤ちゃんもいます。

刺激の強い食べ物が好物だというママも多いでしょう。キムチやニンニク、カレーはたまに適量を食べるぶんには問題ないとされています。極端にたくさん食べることは控えて、ほど良い食生活を進めていけると良いですね。

アルコール

アルコールは、授乳中は控たほうが良い飲み物のひとつです。未成年がアルコールを摂取すると、肝臓がアルコールを分解できずに、脳や骨に悪い影響がおよぶとされています。赤ちゃんは、さらに身体や脳が未発達なので、アルコールの影響を受けやすいといえるでしょう。

母乳中のアルコール濃度はママの血液中のアルコール濃度とほぼ等しいため、飲酒をした後の母乳を赤ちゃんが飲むと、赤ちゃんはじかにアルコールの影響を受けることになります。また、アルコールは母乳分泌に大切なオキシトシンの分泌を減らすため、射乳反射がおこりにくくなるとも言われています。

授乳中の飲酒は基本的に控えることが望ましいです。どうしても飲みたい場合は、授乳直後に飲酒をする、飲酒後最低3時間は授乳をしない、飲酒の前にあらかじめ搾乳をしておく、などの工夫をしましょう。ママの体質によってもアルコールの分解速度は変わってきますので、お酒の弱い方は特に注意してくださいね。

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カフェイン

通常、適度なカフェン摂取は、ガンを抑えるなどの効果があるといった研究結果があります。しかし妊娠中や授乳中の過剰なカフェイン摂取は胎児や赤ちゃんに悪影響を及ぼすとされています。日本では妊娠・授乳期を通してどれだけのカフェイン摂取が望ましいかといった明確な規定はありません。WHOや欧州のデータによると、1日当たり200mg~300mg 、コーヒであれば1日3~4杯までであれば、胎児や乳児の健康リスクは増加しないとされています。

カフェインはコーヒーだけでなく、緑茶や紅茶、ココアやチョコレートにも含まれています。妊娠中や授乳中は、過剰なカフェイン控えるために、ノンカフェインのコーヒーはいかがでしょうか。また、さまざまなノンカフェインのお茶や紅茶が販売されているので、お気に入りの一杯を探しても良いですね。


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授乳中の食事に関する体験談

授乳育児中の食事に関して、ままのてに寄せられた体験談を紹介します。

海外での授乳中の食事

私が住んでいる国は、出産後の食事がパンとチーズ、看護婦さんに「コーヒーと紅茶はどちらにする」と聞かれるような地域です。

日本では、産後は和食中心の食事が良いと聞いていたので、できるだけ和食中心のレシピを心がけました。しかし、限られた日本食材で、いかに和食に似た食事を作れるか想像以上のチャレンジでした。海外在住者にとって、ネット上の和食レシピはありがたかったです。

私が住む国は、授乳中は「ウイキョウ茶」が良いとされ、助産師から母乳育児をスムーズにするために飲むようにすすめられました。また、カカオ合有率の高いダークチョコレートも良いといわれています。

日本人にとっては「本当に大丈夫かな」と不安になる食事指導もありました。しかし、トラブルなく授乳期を終えたことから、母乳育児中のママの食事に対する考えは、国の名産や文化によって違うのだなと感じましたよ。

ママがおいしいと感じる食生活を送ろう

授乳中は、赤ちゃんのためにと食事に気を使うママが多いでしょう。ママの食事が直接母乳に影響をあたえているという明確な答えがないとはいえ、産後のママの身体の回復をサポートするためにも、栄養バランスのとれた食事は意識したいですよね。

母乳と食事に対する考えは、助産師や医療機関関係者によって異なることがあります。さまざまな見解があるものの、大切なのは、ママがストレスを減らした食生活を送ることではないでしょうか。授乳期は、ママの身体や赤ちゃんのためにと考えることが多いですが、ポイントをつかんで、栄養バランスのとれた食事をおいしく食べるように工夫をしてみてください。

普段の食事に気を付ているぶん、たまには甘いものでひと息ついたり、パパと外食や出前を楽しんでも良いですね。

※この記事は2024年7月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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