母乳育児は赤ちゃんのアレルギーに影響するの?母乳と食物アレルギーの関係

赤ちゃんに食物アレルギーがあった場合、皮膚が赤くなるなどの反応がおこります。赤ちゃんにアレルギーがあるかは検査をしないとわからないことから、母乳育児中は、ママの食べた物が赤ちゃんに影響するのか気になりますよね。ここでは、母乳と赤ちゃんのアレルギーの関係について紹介します。

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この記事の監修

眞々田 容子
小児科医
眞々田 容子

目次

  1. 赤ちゃんの食物アレルギーの症状は?
  2. 食物アレルギー以外の子どものアレルギーの症状は?
  3. 母乳育児と食物アレルギーの関係性
  4. アレルギーの検査と時期
  5. アレルギーの対処法とは?
  6. アレルギーと上手に付き合おう
  7. あわせて読みたい

赤ちゃんの食物アレルギーの症状は?

アレルギーとは、身体に入った物質が危険なものと判断されたときに、皮膚が赤くなるなどの反応がおこる免疫のシステムのことです。アレルギー症状の原因となる物質(アレルゲン)が体内に侵入した場合、身体のなかではさまざまな反応がおこります。

その症状には個人差がありますが、食物アレルギーの主な症状は下記の通りです。

湿疹・蕁麻疹(じんましん)

湿疹や蕁麻疹(じんましん)は、皮膚に現れるアレルギー症状のひとつです。アレルギー症状のなかで最も多いとされて、主に「かゆみ」「赤いブツブツ」「皮膚が真っ赤になる」などの症状があるでしょう。

湿疹や蕁麻疹が身体のどこに現れるかは個人差があります。皮膚であれば、どのような場所でも発症する可能性があるようです。

嘔吐・下痢・腹痛

食物アレルギーによって、腸の粘膜がむくみ、嘔吐・下痢・腹痛をおこす場合があります。

赤ちゃんの消化器は、まだ成長段階です。そのため、アレルゲンとなるタンパク質が、しっかりと消化して吸収されないことから、嘔吐や下痢などのアレルギー症状につながることがあるとされています。特に「鶏卵」「牛乳」「小麦」など、タンパク質が豊富な食品を摂取した後に、症状が出やすいようです。

唇やのどの腫れ・かゆみ

身体の粘膜にアレルギー症状が現れることがあります。唇やのどが腫れたり、目やのどにかゆみを感じていたりするようであれば、アレルギーを疑って良いかもしれません。その他に、粘膜に現れるアレルギー症状は下記の通りです。

・目の充血、なみだがあふれる
・まぶたの腫れ
・くしゃみや鼻づまり
・のどがつまったような違和感

咳・呼吸困難

アレルギー症状のひとつに、咳が止まらなかったり、さらには呼吸困難におちいったりすることがあります。これは、肺へ空気を送るための通り道となる気管支が狭くなることが原因です。「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった、苦しそうな呼吸をともなうことが多いでしょう。

また、赤ちゃんの泣き声が枯れたり、声が出なかったりすることがあります。

アナフィラキシー・アナフィラキシーショック

アナフィラキシーとは、「皮膚の異常+粘膜の異常」や「皮膚の異常+呼吸器の異常」などのように、一度に複数の臓器にアレルギー症状が現れることを言います。症状や状態はさまざまですが、皮膚の赤みやかゆみ、目や唇の腫れ、呼吸困難など、一度に身体の複数の臓器がアレルギーに反応して症状が悪化していくことがほとんどです。

また、急激な血圧の低下から意識を失うショック症状をおこす場合があります。アナフィラキシーショックは、とても危険な状態とらえて、早急に救急車を呼ぶなどの措置が必要です。

アナフィラキシーショックのほとんどは、アレルゲンに触れたり口にしたりした、数分~数時間後におこります。アレルギーがあると知らずに触れたとしても、同様の症状がおこるでしょう。

食物アレルギー以外の子どものアレルギーの症状は?

赤ちゃんや子どものアレルギーの原因は、親から子どもへ受け継がれる「遺伝子要因」と、気候や生活環境などが原因の「環境要因」があります。赤ちゃんがアレルギーかどうかを診てもらうために医療機関を受診すると、ママやパパに花粉症などのアレルギーがないか聞かれることがあるでしょう。

赤ちゃんの食物アレルギーは、0~2歳ごろの発症が多いとされ、アレルギー性鼻炎や気管支喘息などは2歳以上の発症が多いようです。年齢とともにゆるやかに落ち着くことが多いので、必要な治療を行いながら、経過を観察していけると良いですね。

乳児喘息(気管支喘息)

赤ちゃんが起こしやすいアレルギーの症状のひとつが気管支喘息です。アレルゲンが原因となり発作的に気道が狭くなることで起こる症状です。発作の症状は、夜間や早朝、天気が変わって急に気圧が変わったときに多くみられます。

気管支喘息は、ダニやハウスダスト、ペットの垢など、生活環境がアレルゲンになっているケースも多いでしょう。どのアレルゲンが症状を引きおこしているかは、個人差があります。なかにはアレルゲンがひとつだけではなく、複数に及んでいる人も多いようです。

環境的なアレルゲンをすべて除去するのは、ほぼ不可能です。そのため、医療機関を受診した際は、アレルギー症状を抑えるためにはどのような方法が最善なのか、医師にしっかりと話を聞けると良いですね。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎はかゆみをともなう湿疹が良くなったり悪くなったりすることを繰り返す皮膚炎です。遺伝的な原因に環境的な原因が加わって発症するといわれています。

汗やストレス、かゆみがある部分を掻き壊すことで症状が悪化するため、日ごろのスキンケアが大切です。アトピーのかゆみは子どもにとって非常に不快なものであるため、薬のぬり方やスキンケアの方法をしっかりと医師と相談できると安心ですね。

母乳育児と食物アレルギーの関係性

ママが食べたものの一部が母乳中に分泌される

一般的に、ママが食べた物は食品によって差があるものの、1~5時間で母乳に移行するといわれています。そのため、授乳後に、赤ちゃんにアレルギー症状のような反応がおこった場合、アレルゲンが含まれた母乳を飲んだのではないかと心配になるママもいるでしょう。

しかし、ママがアレルギーの原因となる食品を食べたとしても、母乳に含まれるアレルゲンはほんの微量とされています。赤ちゃんがアレルゲンを含んだ母乳を飲んだとしても、症状が軽く済むことが多いようです。

間違った食事制限や食物除去はやめよう

赤ちゃんに異常がみられない限りは、ママは食事制限や過度なアレルゲン除去をした食事にする必要はないとされています。むしろ、母乳育児中も、卵や牛乳などのアレルゲンを適度に摂りながら授乳をすることがすすめられています。

これは、赤ちゃんが母乳を通じて卵や牛乳を口にするより、間接的にアレルゲンを体内に摂り入れて、身体を慣らすことが目的のようです。母乳育児中も、ママがアレルゲンとなる食品を適度に摂ることが、赤ちゃんの免疫力につながると考えられています。

しかし、授乳後に、赤ちゃんの皮膚に赤みが増したり、呼吸が苦しそうであったりすることが続くようであれば、小児科か小児アレルギー科を受診するようにしましょう。赤ちゃんの状態や症状によって、対処の方法が変わることがあります。異常がみられた場合は、医師の指示にしたがうことが大切ですよ。

正しいアレルギーの知識が大事

赤ちゃんのアレルギーを見逃さないためにも、正しいアレルギーの知識を持つことが大切です。

一般的に、アレルギー症状の原因は、親から子どもへ受け継がれる、「遺伝子要因」による影響が大きいともいわれています。両親や祖父母の誰かがアレルギーの場合は、体質が遺伝して赤ちゃんもアレルギー症状がでることがあります。

そのため、授乳後、赤ちゃんにアレルギー症状がおこったとしても、必ずしもママの食生活が原因とは言いきれません。アレルギーが疑わしいときは、まずはかかりつけ医としっかりと話しあうことが大切です。赤ちゃんの症状や状態によって治療方法や対処が異なることがあるので、自己判断は控えましょう。

ママは、自分の食生活が悪いのではないかと自分自身を責めずに、自信を持って育児をしてくださいね。

アレルギーの検査と時期

アレルギー検査を受ける場合の子どもの月齢や年齢に、明確な基準はないとされています。そのため、医療機関や医師によっては、月齢が低くても検査を受けるようにすすめられることがあるでしょう。また、ママが検査を希望するときは、受診の際に医師に尋ねても大丈夫ですよ。

検査の種類には、アレルギー検査として一般的な「血液検査」と「皮膚検査」があります。

血液検査

血液検査は、一般的なアレルギー検査の方法で、血液を採取してどのようなアレルゲンを持っているかを調べます。「IgE抗体」というたんぱく質が、血中にどれくらい存在するかを確認してアレルゲンを特定する方法です。即時型アレルギー反応を検査することができます。

血液検査はアレルゲンの明確な判断材料になりますが、赤ちゃんにとっては薄い皮膚に針を刺すことになり、負担がかかります。また、針を刺しても、血管が細くて血液を採取できなかったということもあるようです。月齢によっては、反応がでにくい場合もあります。

医師にアレルギーの検査をすすめられたら、どのような検査方法があるのかをしっかりと確認しておくと安心ですね。

皮膚検査

皮膚検査は、注射針を使わないアレルギーの検査方法です。「スクラッチテスト」と「パッチテスト」の2種類の方法があり、いずれも血液検査に比べて赤ちゃんへの負担は少ないでしょう。ただし、まれに皮膚テストでもアナフィラキシーをおこす危険性があります。また通常の皮膚検査では検査のあとは残りませんが、アレルギー反応が強い場合、皮膚に検査痕が残る場合もあります。

この検査ができる医療施設は限られているため、事前に確認をしましょう。検査に予約がいる場合もあります。

■スクラッチテスト
スクラッチテストは食物などからの即時型アレルギー反応を検査するものです。あらかじめ皮膚に、アレルゲンと考えられる物質を含んだもの塗布します。そのとき、スクラッチ針で赤ちゃんの皮膚に負担がかからない程度に傷をつけ、15分程度ようすを見てアレルゲンを特定する方法です。

■パッチテスト
パッチテストは遅延型アレルギー反応を検査するものです。4型アレルギーである食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎合併などの検査として用いられる場合がありますが、食物アレルギーの即時性アレルギー反応(蕁麻疹、喘鳴)の検査にはなりません。そのため現在メジャーではありません。

あらかじめ小さな紙に、アレルゲンと考えられる物質を含んだものをしみこませます。それを背中や二の腕の内側などの皮膚に貼り、48時間(2日)程度経過した後に、皮膚の反応を確認してアレルゲンを特定する方法です。


アレルギーの対処法とは?

アレルギーは、医師や専門家によって治療方法が異なる場合があります。しかし、アレルゲンを知ることで、アレルギー症状を予防できることがあるでしょう。アナフィラキシーショックのような危険な状態を避けるためにも、アレルギーの予防法を紹介します。

授乳中のママの食事制限は基本的には必要ない

赤ちゃんに重度のアレルギー症状が見られない場合は、母乳育児中であってもママの食事制限は必要ないとされています。

日本小児アレルギー学会によると、卵アレルギーを予防するには、離乳食において生後6ヶ月から卵を少しずつ食べさせるべきだと、アレルゲンの摂取をすすめる方針を提言しました(※1)。また、2019年3月に改定された厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、食べさせる時期を遅らせてアレルギーの発症を予防するという考え方に科学的根拠はないとしています(※2)。

しかし、赤ちゃんの症状や医師の方針によっては、ママの食事からアレルゲンの除去が必要と考える場合もあります。母乳が赤ちゃんのアレルギー症状につながっていないか心配な場合は、自己判断での食事制限は控えて、医師にしっかりと相談をすることが大切ですよ。

レシピあり|離乳食の卵の進め方!いつから?冷凍術やアレルギー対策・簡単…

医師の指導のもとアレルゲンとなる食物を避ける場合もある

赤ちゃんの月齢が低い場合は、「鶏卵」「牛乳」がアレルゲンとなることが多いとされます。また、アレルギーがある場合、少量のアレルゲンでもアレルギー症状をおこす体質の赤ちゃんもいます。

そのため、授乳期の赤ちゃんにアレルギー症状が現れた場合、ママはアレルゲンの可能性がある食品を避けるよう医師の指導を受けることもあるでしょう。1~2週間避けることで、赤ちゃんのアレルギー症状が改善されるかどうか、様子を見ることが目的です。

ただし、ママ自身の判断で食べ物の除去をしたり、症状が出るのに食べ続けたりするのは、どちらも危険です。赤ちゃんに食物アレルギーの症状が疑われる場合は、専門医の指導に従うことが大切ですよ。

ほこりやダニを除去する

母乳育児中に赤ちゃんに蕁麻疹が出たなどのアレルギーを疑う症状が出たとしても、検査をするまでその原因が食べ物にあるか、ほこりやダニなどの環境にあるのかわからないものです。

あまり乳児期にほこりで蕁麻疹がでることはありませんが、気候や生活環境が原因で、アレルギー症状をおこしている場合は、できるだけ部屋の中を清潔にすることが大切です。赤ちゃんにアレルギーがあるかなと感じたときには、ママの食事に気を配るとともに、ほこりやダニを除去するようにしてみましょう。

ほこりがたまりやすいベッドの下や部屋の隅を掃除したり、天気の良い日は布団を干したりと、生活環境に少し気を配ることで、症状が改善する場合があります。「日ごろ、掃除ができていないかも」と感じる場所を一度きれいにしてみましょう。

アレルギーと上手に付き合おう

食物アレルギー症状が現れるのは、0歳~2歳が多いとされています。アレルギーは、アナフィラキシーショックのように危険な状態におちいることがあるため、赤ちゃんが口にするものには気を配りたいですよね。

母乳育児をしていて、赤ちゃんの皮膚に湿疹や蕁麻疹などの赤いブツブツができたり、呼吸が苦しそうだったたりと異常がみられたら、アレルギーの可能性を視野に入れて小児科や小児アレルギー科を受診するようにしましょう。受診をする際は、赤ちゃんは症状が出る前に何をしていたか、授乳後の場合は、ママが食べたものをメモしておくと安心です。

しかし、赤ちゃんに重度のアレルギー症状がみられない場合は、母乳育児中でもアレルゲンを気にした食事制限は必要ないとされています。赤ちゃんに異常がなければ、ママはおいしいものをバランスよく食べて、食事に対するストレスを減らしながら育児をすすめていけると良いですね。

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