【小児科医監修】母乳過多の対処法は?おっぱいの出すぎで赤ちゃんが上手に飲めないことも!

母乳育児にはさまざまな悩みがつきものです。そのひとつが母乳過多(母乳分泌過多症)。母乳不足に比べて周囲に理解されにくいのですが、母乳が出すぎるために苦労をしているママは少なくありません。そこで、母乳過多の原因や対処法、気をつけるべきポイントをわかりやすく小児科医監修で説明します。ぜひ参考にしてくださいね。

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この記事の監修

眞々田 容子
小児科医
眞々田 容子

目次

  1. 母乳過多(母乳分泌過多症)とは?
  2. 母乳分泌過多症の原因
  3. 母乳過多が引き起こす問題
  4. 母乳過多への対処法は6つ
  5. 心配な方は母乳外来を受診しよう
  6. あわせて読みたい

母乳過多(母乳分泌過多症)とは?

母乳過多とは「母乳分泌過多症」のことをいいます。その名の通り、母乳の分泌が多すぎる状態で、赤ちゃんが飲む母乳の量に対して作り出される母乳の量が上回っています。

母乳が足りないよりも、母乳過多のほうが良いのではないかと感じる人もいるかもしれません。しかし、需要と供給の調節ができていない母乳過多の状態は、おっぱいに痛みを生じたり乳腺炎になったりと、さまざまなトラブルの原因になります。授乳に慣れていない赤ちゃんにとっても、実はあまり望ましいことではないのです。

「おっぱいが出すぎてつらい」「母乳過多で悩んでいる」と悩むママは少なくありません。母乳過多の原因と対策を知り、授乳の悩みを解消していきましょう。

母乳分泌過多症の原因

授乳方法に問題がある

産後の入院中は「片方のおっぱいで3~5分ずつ、左右交互に授乳して、1回の授乳で2~3往復する」というように、時間を計りながら交互に授乳するよう指導されるのが一般的です。この授乳方法は、母乳の分泌を促し、乳腺炎を予防して、母乳の分泌量の左右差をなくす効果があるといわれています。

しかし、母乳過多のママが左右交互に授乳すると、余分な母乳の分泌を促してしまう可能性があるため注意が必要です。というのも、交互授乳では両方のおっぱいにたまっていた母乳が短時間で空になり、新しい母乳を急いで作ろうとするからです。赤ちゃんがすでに十分な量を飲んでいる場合、母乳が余ってしまい母乳過多の状態になります。

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赤ちゃんがおっぱいを飲むのに慣れていない

新生児のあいだは赤ちゃんがおっぱいを吸うことに慣れていません。おっぱいを上手に飲めないことが多く、慣れるまで飲む量は少なめです。それにもかかわらず、赤ちゃんがおっぱいを吸うときの乳頭への刺激が合図となって、ママの身体は母乳を生産し始めるため、結果として母乳が余り、母乳過多状態になってしまいます。

赤ちゃんが上手におっぱいを飲めていない様子が見られたら、赤ちゃんが飲みやすいよう、抱き方や飲ませ方を工夫して母乳過多の対策をしてみましょう。

搾乳をしすぎている

母乳過多になると、おっぱいの張りを和らげるため、搾乳を行うママも多いでしょう。しかし、搾乳のしすぎによっておっぱいが空になってしまうと、母乳のさらなる生産を促してしまうことがあります。母乳過多を防ぐためにも、張りを和らげるための搾乳はあくまでもガス抜き程度にしておきましょう。

高プロラクチン血症

母乳過多の原因に高プロラクチン血症という疾患が関係していることがあります。プロラクチンは脳の直下にある脳下垂体(のうかすいたい)という場所から分泌されるホルモンで、子宮の回復を促す、母乳を分泌するなど、産後のママに欠かせない働きがあります。

しかし、血液中のプロラクチンの濃度が高すぎると、母乳過多などさまざまな症状をもたらします。高プロラクチン血症の原因として代表的なものは次の通りです。

・脳下垂体の腫瘍
・視床下部の障害
・甲状腺機能低下
・薬の服用(向精神薬、ピル、抗潰瘍薬、降圧剤など)
・慢性腎不全

ほかさまざまな原因によってもたらされます。心あたりがある方や心配な方は、かかりつけの病院を受診するようにしましょう。

母乳過多が引き起こす問題

ママの乳腺炎などのおっぱいトラブル

母乳過多はさまざまなおっぱいトラブルを引き起こしやすくなります。代表的なものをご紹介します。

・白斑
白斑は乳頭にできる小さなできものを指します。これは、飲み残しの母乳などの脂肪分が、母乳の出口である乳口をふさいでできるものです。白斑ができると強い痛みを感じ、授乳が苦痛になることもあります。症状が進行すると、乳腺炎になることがあります。

・急性うっ帯性乳腺炎
母乳過多の場合、おっぱいの飲み残しなどで母乳がたまりやすくなり、急性うっ帯性乳腺炎のリスクが高くなります。急性うっ帯性乳腺では、たまった母乳が乳口や乳管を詰まらせて乳腺に炎症を起こすことで、おっぱいに強い痛みを生じ、高熱が出ることもあります。

・化膿性乳腺炎
母乳過多のおっぱいは飲みづらく、赤ちゃんが浅くくわえるなどし、乳頭を傷つけることがあります。化膿性乳腺炎とは、傷口から雑菌が入り、おっぱいの中で炎症になることを指します。おっぱいの痛みや発熱、母乳に血や膿が混ざるといった症状がみられます。

これらの症状が治まらない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。

赤ちゃんがむせる・吐く

母乳過多状態にあると母乳が出る勢いが良すぎるため、赤ちゃんがむせやすくなります。むせた拍子に吐くこともあるでしょう。

また、赤ちゃんは満腹中枢が未発達であるため、お腹がいっぱいになっても、おっぱいが近づくと反射的に飲んでしまいます。しかし、実際にはお腹が満たされているので、母乳過多になると赤ちゃんがむせたり吐いたりすることがあります。

赤ちゃんの機嫌が悪くなる原因になる?

母乳過多の状態を和らげるために、赤ちゃんにおっぱいを頻繁に与えてしまうと、赤ちゃんが母乳を飲みすぎて過飲症候群(飲みすぎ)になることがあります。過飲症候群の赤ちゃんには、お腹の張りや嘔吐などがみられ、機嫌が悪くなることもあります。

また、母乳は授乳の途中で成分が変わります。それぞれ「前乳(水分量が多い)」と「後乳(脂肪分が多い)」と呼ばれています。交互のおっぱいを飲ませる方法では、赤ちゃんは両方のおっぱいから水分量が多く薄い前乳ばかり飲むことになります。カロリーが高い後乳を飲めないため、赤ちゃんが過剰におっぱいを欲しがり、さらに母乳生産を促すという悪循環になります。

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赤ちゃんの体重が増えない原因になることもある?

母乳が出すぎていたとしても、赤ちゃんの体重が増えないことがあります。たとえば、母乳過多の状態ではおっぱいが張り、硬くなってしまうことがあります。硬いおっぱいは、身体が小さく力が弱い赤ちゃんにとって飲みづらいものです。

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母乳過多への対処法は6つ

1.赤ちゃんに授乳する前に軽く搾乳する

おっぱいが張った状態で母乳を与えると、母乳の勢いが良すぎて赤ちゃんがむせたり吐いたりすることがあります。また、おっぱいが硬くて飲みにくいなどの理由から飲みたがらないこともあります。

授乳前に軽くマッサージや搾乳し、おっぱいを赤ちゃんにとって飲みやすい状態にしておきましょう。搾乳しすぎると母乳を作りすぎてしまうため、勢いを和らげる程度にすることが大事です。

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2.赤ちゃんのおっぱいの吸い方を改善する

赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によって母乳はどんどん生産されますが、赤ちゃんが母乳を上手く飲めないと母乳過多がますます進行し、症状が悪化してしまいます。そのため、赤ちゃんがおっぱいを上手く飲めるようになることが大事です。

特に生まれたばかりの第一子の場合はママも赤ちゃんも慣れておらず、おっぱいの飲み方に問題があって母乳過多となっていることが多いため、以下のようなことに注意してみましょう。

授乳時のチェックポイント

・浅い飲み方になっていないか
・赤ちゃんの顔や鼻を圧迫していないか
・赤ちゃんの身体や首がよじれていないか

3.授乳の姿勢を変えてみる

また、いつも同じ姿勢で授乳していると特定の乳腺のみが使われ、他の乳腺がつまりやすくなったり、乳頭への負担が同じ場所に集中して傷になったりするおそれがあります。抱き方にはさまざまな方法があるので、ぜひ試してみましょう。授乳時の抱っこ・体勢は次の通りです。

横抱き

産院などで指導される一般的な授乳方法です。授乳するほうの腕で赤ちゃんを支えます。ひじの内側に赤ちゃんの頭を乗せ、乳頭を深くくわえさせて授乳します。お尻は手のひらで支えてあげましょう。交差抱きよりも手首への負担が軽いため、交差抱きで赤ちゃんがおっぱいを吸うのに慣れたら横抱きに切り替える人もいます。

交差横抱き(斜め抱き)

授乳に慣れない新生児や小さく生まれた赤ちゃんに授乳しやすい抱き方です。ママのお腹と赤ちゃんのお腹が向き合うように赤ちゃんを横向きに抱っこします。授乳するのが左胸なら左手、右胸なら右手で乳房を支え、もう一方の手で赤ちゃんを支え授乳します。横抱きなどで赤ちゃんがうまくおっぱいを吸えずに母乳過多になっているときは、交差抱きも試してみましょう。

縦抱き

赤ちゃんをママの太ももの上に座らせて、縦に抱っこしながら授乳する方法です。赤ちゃんの表情が見えやすく、授乳中に寝てしまう赤ちゃんにも向いています。首がすわる前は首をしっかり支えて安定させましょう。

フットボール抱き

授乳するほうの手のひらに赤ちゃんの頭を乗せ、赤ちゃんの身体はママの脇の下を通して抱えるように授乳する方法です。授乳クッションがあると安定します。横抱きや縦抱きと吸いつく方向が変わるため、飲み残しがあるときにも向いています。

添い乳

ママが添い寝をしながら授乳する方法です。窒息のおそれがある、赤ちゃんがげっぷしにくいなどのデメリットもあります。また、飲み方が浅く乳腺炎になりやすいともいわれているため、母乳過多のママは注意しましょう。

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4.搾乳しすぎない

おっぱいの張りを和らげるために搾乳しすぎると、かえって母乳の生産が過剰になり、逆効果になってしまいます。「少し軽くなった」という程度にとどめておくようにしましょう。

また、あまり強い力で搾乳すると、繊細な乳腺組織を傷つけてしまい、乳腺炎などのトラブルの原因になります。慌てずにゆっくりと搾乳するようにしましょう。

搾乳方法は次の通りです。

1.乳管開口マッサージ(親指と人差し指、中指で乳頭から乳輪を持って優しくひねる、引っ張る、揉みほぐす)を行う
2.手のひらでおっぱいを下から支えるように持ち、親指と人差し指で乳頭をつまむ
3.親指と人差し指でおっぱいを押すような感覚で圧をかける

乳頭に痛みやしこりがある場合、母乳がつまっている可能性があります。上記の方法はセルフチェックにもなるため、ぜひ試してみてください。

5.片側授乳を試してみるのもひとつの手

一般的には、両方のおっぱいから交互に授乳する方法が乳腺炎のリスク軽減のために推奨されています。しかし、この方法では、両方のおっぱいから母乳がなくなってしまうので、母乳を急いで分泌してしまうことがあります。また、高カロリーで腹持ちの良い後乳を飲ませにくく、赤ちゃんが満足せず過飲症候群になることがあります。

一方、片方のおっぱいからのみ授乳する片側授乳は、母乳の分泌を抑えるとして効果が期待されている方法です。片側授乳ではさまざまな方法が実践されています。一例として、次の方法を紹介します。

1.1回目の授乳で片方のおっぱいのみから授乳する
2.2回目の授乳は反対側のおっぱいからのみ授乳する(1.の授乳から2時間以内であれば1.と同じおっぱいで授乳する)
3.授乳していないほうのおっぱいは張りやすくなるので、つらい場合は軽く搾乳をして様子を見る(搾乳のしすぎに注意する)

数日すると次第に母乳の生産が落ち着いてくるといわれています。最初は授乳していな方のおっぱいが張りやすくなるので、乳腺炎にならないように注意しましょう。

6.睡眠をしっかりとり疲れをためない

出産はママの身体に大きな負担を与えます。産後は赤ちゃんのお世話をしなければならず、体力を消耗し精神的な負担を感じているママも多いでしょう。

母乳過多になると授乳や搾乳の時間が長くなる、おっぱいが痛むなどして、ママがゆっくり休めないことも少なくありません。夜中にも授乳や搾乳をすると睡眠時間が短くなり、強いストレスの原因になることが考えられます。そのため、せっかく母乳が出ていても、疲労やストレスが原因で母乳が分泌されなくなることもあります。

ママが休めるときにはしっかり休むことが大事です。授乳以外のお世話はパパや両親など家族に協力をしてもらう、家事は完璧を目指さず手を抜く、赤ちゃんと一緒に昼寝をするなどして、疲れをためないようにしてください。

心配な方は母乳外来を受診しよう

母乳過多の悩みは、周囲の人になかなか理解されず、ひとりで悩んでしまうママも少なくありません。さまざまな方法を試しても改善が見られない場合は、母乳外来を受診してはいかがでしょうか。

専門家に診てもらうことで、一人ひとりのママにあった、おっぱいマッサージやケア方法を教えてもらうことができるでしょう。これからの授乳タイムが苦痛ではなく、幸せなひとときになるように、ぜひ参考にしてくださいね。

※この記事は2025年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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