授乳中にはちみつやカレー・牛乳・チーズ・お餅は大丈夫?豆乳や甘酒は母乳に良いの?
「母乳の質が良くなる食べ物が知りたい」「刺身を食べてはいけないのは本当なのか」など、母乳育児をしているママの多くが、普段の食生活について不安や疑問を抱えていることでしょう。そこで、授乳中に控えたほうが良いといわれている食べ物について、本当に母乳に影響するのかどうか、厚生労働省などのデータをもとにわかりやすく解説します。
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目次
母乳の質に食べ物が影響するって本当?
「お餅や白米を食べすぎると乳腺炎になる」「キムチやカレーなどの辛いものを食べると母乳がまずくなる」という話を聞いたことがありませんか。
ママが食べたものが直接母乳に影響を与えるという考え方は、古くから受け継がれています。産婦人科や母乳外来でも、母乳の質を良くする食事について指導された方も多いでしょう。
しかし、ママが食べた食事から直接母乳が作られるわけではありません。ママの身体の中で消化・吸収されてから血液に流れ、母乳になります。現在のところママの食事が母乳の質に影響を与えるという医学的根拠はありません。
とはいえ、偏った食生活は体調不良を招くことがあります。ママがいつも元気でいるためにはバランスの良い食事をとるようにしましょう。
授乳中にはちみつはOK?
腸内環境が未熟な1歳未満の乳児は、はちみつを摂取してはいけません。もし1歳未満の乳児がはちみつを多く摂取すると、はちみつに含まれるボツリヌス菌が体内で繁殖してしまい、乳児ボツリヌス症という病気にかかることがあります。乳児ボツリヌス症は死にいたるケースもありますので、十分注意しましょう。
授乳中のママがはちみつを食べると、ボツリヌス菌が母乳にうつるのではと不安に思う方もいるかもしれません。授乳中のママがはちみつを食べても母乳に影響することはありませんので、安心してくださいね。
カレーやキムチなどの辛いものは母乳に影響する?
カレーやキムチなど辛い物を食べると、母乳が辛くなる、まずくなる、にんにくの風味が移るという噂があります。しかし、辛い食事が母乳に影響を与えるという医学的根拠はありません。実際に、香辛料やにんにくを多く摂取する諸外国においても、古くから母乳育児は行われています。
ただし、あまり辛いものに食べ慣れていない場合、刺激が強い食事を多くとると胃に負担をかけることがあるので、食べすぎには注意しましょう。
牛乳やチーズなどの乳製品は母乳が詰まる?
牛乳やチーズなどの乳製品を食べると、母乳が出すぎてしまうため乳腺が詰まりやすくなるという話を聞いたことがありませんか。しかし、乳製品を食べたからといって母乳が増えるという根拠はありません。むしろ牛乳やチーズなどの乳製品にはカルシウムが多く含まれているので、適度に摂取したほうが良いでしょう。
ママの母乳には、赤ちゃんの身体を作るために必要なカルシウムが含まれています。ママが食事で十分なカルシウムを摂取していないと、ママの骨や歯からカルシウムが流出してしまいます。できるだけ、普段の食生活に乳製品を取り入れるようにしましょう。
ただし、パパやママ、上のきょうだいなどの家族にアレルギー歴がある場合は、主治医の指示に従いましょう。(※1)
お餅はおっぱいが詰まりやすい?
食べるものが少なく貧しい時代においては「母乳をたくさん出すためにお餅を食べると良い」という考えがありました。一方で、栄養を十分に摂取できる時代になると「お餅を食べると母乳が出すぎてしまい、おっぱいが詰まりやすくなる」という情報が広がりました。
しかし、お餅が母乳の出方に影響を与えるという医学的根拠はありません。乳腺炎を心配してお餅を控える必要はないので、安心して食べてくださいね。
豆乳は母乳の質を良くする?
「豆乳を飲むと母乳の出が良くなる」「母乳がサラサラになる」といった情報を聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし、現在において豆乳が母乳の質を向上させるといった医学的根拠はありません。
ただし、豆乳はコレステロールがゼロでタンパク質や食物繊維、ミネラル、ビタミン、レシチン、サポニンなどさまざまな栄養素が含まれている飲み物です。出産や育児で疲労しているママにとって、豆乳は良い栄養源となるでしょう。
納豆やお豆腐などの大豆製品にも豊富な栄養素が含まれていますので、豆乳が苦手な方は食事にプラスしてみてはいかがでしょうか。
ただし、豆乳や納豆、お豆腐に含まれる大豆イソフラボンを過剰摂取すると、ホルモンバランスを乱す恐れがありますので、飲みすぎや食べすぎに注意しましょう。(※2)
生卵・卵を授乳中に食べるとアレルギーの心配がある?
母乳育児中に生卵や卵製品を多く摂取すると、母乳を通じて赤ちゃんが卵アレルギーを起こすのではないかと心配するママも多いでしょう。
卵に含まれるアレルゲンは、少量ですが母乳に分泌されることがわかっています。しかし、特に赤ちゃんに異常がみられない限り、授乳中のママが卵の摂取を控えることは推奨されていません。アレルギーの心配をして、食べ物や飲み物を自己判断で制限するのではなく、栄養価が高い卵を適度に摂取することで食事のバランスをとりましょう。
赤ちゃんに食物アレルギーがあると診断されている場合や、母乳を与えた後に赤ちゃんに異常がみられるときには、かかりつけの小児科に相談をしましょう。場合によっては、ママの食事制限が必要になることがありますが、赤ちゃんが離乳食を始めるころにママの食物除去は解除されることが一般的です。
お寿司・刺身を授乳中に食べても良いの?
一部の魚介類には微量の水銀が含まれているため、妊娠中の女性の場合、魚介類の摂取について制限があります。そのため、ママがお寿司や刺身を食べると赤ちゃんにとって有害な成分が母乳に移行するのではないかと心配するママは多いでしょう。
しかし、内閣府が管轄する食品安全委員会の食品健康影響評価において、母乳を通して赤ちゃんが水銀を取り込む量は少ないことがわかっています(※3)。授乳中のママが魚の摂取を控える必要はありません。
魚は良質なタンパク質を含んでいます。また、血管障害の予防やアレルギー反応の抑制に作用するEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)も多く含んでいます。魚を食生活に取り入れてバランスの取れた栄養摂取を心がけましょう。
また、妊娠中はうなぎを食べすぎないように指導されますが、授乳中であれば問題ありません。
甘酒は母乳に影響する?
授乳中はアルコールの摂取を制限する必要があるため、甘酒は飲んで良いかどうか気になる方は多いでしょう。ソフトドリンクとして扱われている市販の甘酒は、アルコールが含まれていたとしても1%未満です。授乳中に飲んでも母乳に影響を与えることはありません。
ただし、酒粕を用いて甘酒を手作りする場合は、調理の仕方によってアルコール成分が残ってしまう可能性があります。授乳はもちろんのこと、運転にも支障が出るため注意しましょう。
ママの嗜好品の影響はあるの?
母乳はママの血液からつくられているので、赤ちゃんはアルコールやコーヒーに含まれるカフェインの影響をうけてしまいます。アルコールは飲酒後30~60分後に血中濃度がピークとなるといわれており、飲酒量の約2%が母乳に移行されます。飲酒量が多いとプロラクチン濃度の低下により、母乳の分泌量が減ってしまい、赤ちゃんの成長が抑制されたという報告も出ています。
またカフェインも同様に、母乳を介してママの摂取量の約0.06~1.5%が赤ちゃんに移行します。ママがコーヒーを沢山飲んでしまうと、泌乳量が減ってしまうだけでなく、赤ちゃんもカフェインを摂取することで、興奮して眠れなくなることが報告されています。
赤ちゃんのためにも、嗜好品は控えておきましょう。(※4)(※5)
育児は体力勝負!バランスの取れた食事を心がけよう
母乳育児をしていると、「自分の食事が母乳の質に影響を与えてしまうのでは」と神経質になってしまうママは多くいます。
しかし、ママの食事が原因で母乳の質を低下させる、乳腺炎を起こすといった情報には医学的な根拠がありません。あまり気にしすぎると、食事そのものがストレスに感じてしまうこともあります。
食事内容を気にしすぎるよりも魚や牛乳、卵を適度に摂取して、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。ママが元気でいることが赤ちゃんにとっても大切なことです。