妊婦の痔の種類や治療法、影響は?出血・痛み・かゆみについて

妊娠中・出産後の20〜50%の女性がお尻のトラブルに悩むことがあるといわれています。なかでも「痔」は相談しにくい病気のため、市販薬に頼る・放置するという方も少なくありません。痔には種類があり、重症化する前に適切な治療を行うことが大切です。妊婦の痔の原因、治療法や予防法、かゆみなどの症状について解説します。

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この記事の監修

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産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 相談しにくい「痔」などのお尻のトラブル
  2. 痛い妊婦の「痔」、かゆみや痛みで眠れない人も
  3. 妊婦の痔の出血量・痛みはタイプによって異なる
  4. 妊婦がなりやすい「痔」、どんな種類がある?
  5. なぜ妊婦は痔になりやすい?出産後も注意が必要?
  6. 妊婦の痔は胎児に影響を与える?
  7. 妊婦でも痔の手術が必要になる?手術は受けられる?
  8. 市販の痔の薬は使用可能?漢方や軟膏も注意すべき?
  9. 痔の薬以外の対処法、自己判断で試してOK?
  10. 妊婦の痔の予防は「便秘対策」から
  11. 一人で悩まず、適切な治療で症状を緩和しよう
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相談しにくい「痔」などのお尻のトラブル

妊娠中は大きくなるお腹を始め、さまざまな身体の部分に変化が現れます。肩こり、腰痛、頭痛、息苦しさを感じたり血行が悪くなったり、足がむくむこともあるでしょう。妊婦は人には言いにくい「尿漏れ」「痔」といった症状に悩むこともあります。痔に悩む女性対象に行なったある調査では、妊娠・出産前後で痔になった、痔が悪化したという人が全体の約8割を占めたというデータがあるようです。

痔は症状がある人だけでも成人の約半数いるともいわれています。身近な病気ではありますが、恥ずかしさから適切な治療を受けずに悪化してしまうケースも少なくないようです。痔は大きく分けて3つのタイプに分かれ、男女ともに最も多いのは「痔核(じかく)」と呼ばれる直腸や肛門の血行が悪くなり、血管の一部が膨れ上がることで出血・脱出が起こるものです。いぼ痔と呼ばれることもあります。皮膚が裂ける「裂肛(れっこう)」、膿がたまる「痔瘻(じろう)」といったものが他にはあります。

痛い妊婦の「痔」、かゆみや痛みで眠れない人も

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なかなか他人に相談しにくいと考える人も多いかもしれませんが、妊婦のお尻のトラブルは珍しいものではありません。妊婦はお腹の胎児の成長に伴い子宮が大きくなり、血管を圧迫し、便秘になりやすくなります。便秘は妊婦の痔が発症する・痔が悪化する傾向の一因になっているともいわれています。

妊婦の痔の症状は、痔のタイプや原因によっても差があるようです。痛い、痔が痛くて寝られない、かゆい、痔核が飛び出ている、腰痛を感じるといった症状が多いでしょう。妊婦は臨月が近くになるつれて、大きくなったお腹の重みで息苦しさを感じ、眠れなくなることもあります。さらに痔の痛みにより眠れないと、ストレスが増し、とてもつらいでしょう。痔の症状が深刻化するほど手術が必要になることもあるので、放置せずに早い段階で対処していきましょう。

薬の使用をためらうことで病院の受診自体を控える妊婦も少なくありませんが、つらい症状を我慢するのではなく、症状緩和に向けて副作用などを考慮しながら相談していくことも大切でしょう。

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妊婦の痔の出血量・痛みはタイプによって異なる

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妊婦の悩みのひとつとしてあげられることも多い「痔」ですが、痔のタイプによって出血量や痛みの有無は変わります。女性に多い、切れ痔とも呼ばれる「裂肛(れっこう)」では便秘や下痢などで肛門が裂け、排便をするたびに痛みとともに少量の出血があります。

一般的に最も多い、いぼ痔・脱肛とも呼ばれる「痔核(じかく)」では症状の段階によって痛みや出血量が異なります。初期は痛みがなく鮮血が紙につく・ポタポタ落ちる程度で、イボが外に出ても自然に元に戻るケースが多いようです。しかし症状が進むと、イボがなかなか戻らないようになり歩く・しゃがむだけで痛みを感じたり、便器が真っ赤になるほどの大量の出血があり、血が止まらないことで貧血を引き起こしたりすることもあります。

また注意しなければならないのが、痔以外の出血の可能性もあるという点です。外傷、不正出血であれば、また痔とは異なる治療が必要になることもあるでしょう。出血が止まらない、ひどい痛みが続くといったことがあれば、妊婦健診の際に医師に相談してみるのも良いでしょう。

妊婦がなりやすい「痔」、どんな種類がある?

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妊婦が痔になる・痔が悪化するケースは珍しくありませんが、なかなか相談しにくいという人も多いでしょう。このため、痔の種類によって対処法が異なることを知らずに自己流で対処し、悪化してしまうことも多いようです。一般的には痔核(じかく)、痔瘻(じろう)、裂肛(れっこう)の3種類に分けられます。種類や進行度により痛み・かゆみの有無や出血量は異なります。

痔核(じかく)

痔の症状に悩む半数以上が「いぼ痔」「脱肛」「出痔」とも呼ばれる痔核であるといわれています。痔核は、直腸肛門部が圧迫されることで血管の一部に血がたまって膨れ上がり、出血やイボが外に出ることがあります。痔核には「内痔核」と「外痔核」があり、内痔核に比べて外痔核はひどい痛みを感じることが多いようです。患部を触れたときに血豆のようなものがある場合には、肛門付近に血の塊ができる「血栓性外痔核」の可能性があるでしょう。

痔瘻(じろう)

男性に多いといわれる「痔瘻」は、細菌感染で肛門周辺に膿がたまります。膿を出し切れば治るのではないかと考えてしまいますが、根元の治療をしないと症状が治ってもまた繰り返すことが多く、手術が必要になるケースもあります。下痢や裂肛と呼ばれる切れ痔が原因で細菌感染することがあります。咳をすると響くような痛みを感じる人もいるそうです。

裂肛(れっこう)

女性に多いといわれる「裂肛」は、切れ痔とも呼ばれます。便秘による硬い便や下痢で肛門の皮膚が裂けて傷ができ、排便時・排便後に痛みとともに少量の出血が起こります。裂肛を繰り返すと、肛門が狭くなる肛門狭窄(こうもんきょうさく)と呼ばれる症状を引き起こす可能性があり、排便しにくくなり痛みが増すという悪循環に陥ることもあります。

なぜ妊婦は痔になりやすい?出産後も注意が必要?

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妊婦が痔などお尻のトラブルに悩む原因のひとつとしてよくあげられるのが「便秘」です。妊娠中は女性ホルモンの変化やお腹の胎児の成長により、子宮が次第に大きくなることで直腸・肛門を圧迫し、便秘になる妊婦がみられます。硬い便を我慢することで肛門に傷がつき切れ痔が生じる、痔核が腫れやすくなり血豆のような血栓ができて痛むことが多いようです。

また妊娠中の骨盤内のうっ血、便秘により出産後に切れ痔になりやすい傾向もあります。他には、妊娠中に多い「貧血」に対して処方された鉄剤の副作用で便秘が起こる人もいます。

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妊婦の痔は胎児に影響を与える?

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妊婦であれば、さまざまな身体の症状が妊娠の経過・お腹の胎児にどのような影響を与えるのかが気になるのは当然でしょう。痔がお腹の胎児に直接的な影響を与える、流早産を直接引き起こすケースは少ないでしょう。可能性としては痔の合併症として深刻な状態を引き起こす、自己判断で薬を使用してしまい妊娠の経過や胎児の影響が出るといったケースは考えられます。

痔の合併症としてはスキンタグ・肛門ポリープ・肛門狭窄(こうもんきょうさく)などの可能性が考えられるでしょう。原則、手術が必要になるほど症状が深刻化するケースは痔で悩む人の1割から2割程度です。痔による大量出血で貧血になる、化膿を繰り返すなどのケースのみで手術が適用されるでしょう。なお、痔の原因になる「妊娠中の便秘」は子宮収縮・お腹の張りの原因になり、早産を引き起こす可能性があるため十分に注意しましょう。

妊婦でも痔の手術が必要になる?手術は受けられる?

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妊婦が痔で悩んでいる場合に気になるのが、手術が必要になるのかという点かもしれません。痔で手術になるケースは、全体の1割から2割程度といわれており、決して多いものではありません。基本的には、軟膏・座薬・内服薬などでの薬物療法と日常生活の改善が治療の中心となるでしょう。

手術を行う場合には痔の症状がある程度進行しており、手術の必要があると判断された場合のみ実施されます。結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)と呼ばれる痔核の切除を始め、PPH法・ALTA法と呼ばれる治療方法があります。入院期間や治療費は手術により異なります。目安としては、入院期間は2日から10日程度、手術日は3割負担で40,000円から80,000円程度になります。ただし手術費の他に処置代や薬代、入院費は別途かかります。

手術が必要だと判断された場合、妊娠16週までは胎児への影響を考えて、妊娠36週以降は出産への影響を考えて手術を避ける場合が多いようです。安定期に入る20週から32週前後に、必要であれば手術を行います。麻酔は腰椎麻酔と呼ばれる身体の一部のみに麻酔をかける方法で、胎児や母体への影響は基本的にないといわれています。もちろん妊婦本人と家族の意向や妊娠の経過によっては、手術以外の対処方法を続けることもあります。

市販の痔の薬は使用可能?漢方や軟膏も注意すべき?

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妊婦が薬を用いる際には、お腹の胎児・母体への影響を考えなければいけません。妊婦には使用しない方が良い薬、妊婦が使用する場合にはよく検討が必要である薬があります。痔による痛み・かゆみ・出血などを我慢するのではなく、副作用や影響の可能性を理解した上で、薬の使用をふくめて症状の緩和をどのように目指していくのかを医師とよく相談することが大切でしょう。

妊娠初期であれば胎児の器官形成に薬が影響を与える可能性があり、妊娠中期から後期にかけては胎盤を通して薬の影響が胎児におよぶ可能性があります。市販の飲み薬はもちろん塗り薬・軟膏・漢方や貼り薬・座薬なども、妊娠中は自己判断で使用せずに医師に相談してから使用すると良いでしょう。妊娠前からずっと使用しているオロナイン・ボラギノール・メンソレータムリシーナなどの市販薬があれば、事前に医師に使用の相談をしておくと良いかもしれませんね。

病院で処方されることがあるポステリザン・ネリプロクト・リンデロンなどの薬に対して疑問点や不安があれば、薬剤師や医師によく相談しましょう。

痔の薬以外の対処法、自己判断で試してOK?

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妊婦であれば、できる限り薬の使用を避けたいと考える人は少なくないでしょう。痔に効果があるいわれる薬以外の方法は、さまざまなものがあります。馬油やツボ・患部をホッカイロなどで温める・ホホバオイルなどのアロマオイルを使用する・マッサージ・ヨガなどの方法があげられるでしょう。一部では消毒のために市販薬を患部に使用するといった危険な方法や痔の種類によっては悪化を招く可能性がある方法もあるようです。

民間療法は科学的に検証されていないものもあるため、実行する際には注意が必要です。特に妊婦であれば、お腹の赤ちゃんや自分への影響を考えた上で信頼できる方法のみを実践することが大切でしょう。判断が難しいものがあれば、お腹の赤ちゃんのためにも医師に相談しましょう。応急処置として痛みを感じたら安静にする、排便時には患部を清潔に保つようにするといったことであれば比較的安全ですが、原因によっては悪化する可能性もあるため病院を受診するのが安心できるかもしれません。

妊婦の痔の予防は「便秘対策」から

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妊婦の痔の予防方法としては、まず原因としてあげられることが多い「便秘を予防する」ことが重要です。妊娠中はつわりや甘いものなどの摂り過ぎで栄養が偏る・不足することもあるでしょう。無理して食べる必要はありませんが、栄養バランスを考えながら1回の食事の量を減らして食事回数を増やすなどしてバランスの良い食事を心がけましょう。

ごぼうなどの根菜類・人参などの緑黄色野菜・こんにゃくなどの食物繊維が豊富な食品、腸内環境を良くするために乳酸菌が含まれるヨーグルトや納豆などの発酵食品などを意識的に摂取するのも良いでしょう。お尻への刺激を少なくするために香辛料の取り過ぎにも注意をしましょう。十分な水分の摂取、お尻をウォシュレットやシャワーなどで清潔を保つことも意識してくださいね。

妊娠中にお腹が大きくなってくると血管や膀胱などを圧迫してしまうため、体勢にも気をつけましょう。仰向けよりは身体を横に向けて、お尻への圧迫を避けてください。また血のめぐりが悪くならないように、長時間同じ姿勢で立つ・座るといったことも避けると良いでしょう。長時間の立ち仕事などには、必要であれば医師に相談し、母性健康管理指導事項連絡カードを用いて職場に連絡してくださいね。

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一人で悩まず、適切な治療で症状を緩和しよう

痔に悩んでいることを相談できず、何とか自分のみで解決できないかと考えてしまう妊婦は少なくありません。痔といえども、痔核・痔瘻・裂肛と種類があり、それぞれ適切な治療を行う必要があります。

何科を受診すれば良いかわからない・肛門科の受診に抵抗があるといった場合には、まずは産婦人科の医師に妊婦健診の際に相談してみると良いでしょう。自己判断で誤った対処を行い、悪化させないように注意してくださいね。

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