【産婦人科医監修】インフルエンザや風邪のときに母乳を赤ちゃんにあげても大丈夫?

いくら気を付けていても、どうしても風邪やインフルエンザにかかってしまうことはありますよね。特に母乳をあげているときは薬を飲んでも良いのか、母乳をやめたほうが良いのか悩むママも多いのではないでしょうか。今回は、インフルエンザや風邪のときの授乳について産婦人科医監修で解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. インフルエンザや風邪は、母乳から赤ちゃんにうつる?
  2. インフルエンザと風邪の違いは?
  3. インフルエンザになっても授乳ができる条件
  4. 授乳中にインフルエンザや風邪になったときの注意点
  5. インフルエンザの薬、風邪薬を飲んでも大丈夫?
  6. 母乳育児中にインフルエンザ予防接種は受けられるか
  7. 医師によっても意見はさまざま
  8. あわせて読みたい

インフルエンザや風邪は、母乳から赤ちゃんにうつる?

日本産科婦人科学会によると、赤ちゃんが母乳からインフルエンザや風邪に感染することはないようです。したがって、母乳は安全と考えられています。ママは赤ちゃんに母乳をあげることができますが、その際には注意が必要です。

インフルエンザと風邪の違いは?

どちらもウイルスが原因の感染症です。インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症ですよね。その他にもウイルスは何百種類とありますが、ウイルスに感染して咳や鼻水、熱が出るときにまとめて風邪と呼んでいます。ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルスなどが風邪症状を起こしやすいウイルスとして有名です。インフルエンザも風邪の一種といえます。

インフルエンザの特徴

・いきなり38度以上の高熱がでる
・関節痛や頭痛、筋肉痛、咽頭痛がある
・ひどい悪寒や倦怠感がする
・少したってから鼻水や咳がではじめる
・気管支炎や肺炎、脳症を合併することがある
・インフルエンザは接触、飛沫感染が原因
・インフルエンザウイルスは空気中にただよって長時間生存することができる

インフルエンザC型は一般の風邪と見分けがつきにくく、ほかのインフルエンザと違って症状が軽いのが特徴です。そのようなこともあり、抗インフルエンザ薬であるタミフルやリレンザ、イナビルはインフルエンザA型とインフルエンザB型に効くようになっています。

インフルエンザは症状が全身に出るのが特徴のひとつで、潜伏期間は1日から3日が多いようです。インフルエンザにかかって3日ほどすると、鼻水や咳がではじめます。ただし、ワクチンを接種していると症状が軽くすむなど、典型的な症状がでないことも多くなっています。

インフルエンザに効く薬を服用した際、3日目から良くなることが多いですが、インフルエンザウイルスはまだまだ活発なため3日目にほかの人にうつしてしまうことが多いのです。

風邪の特徴

・発熱は39度未満が多い
・喉の痛みがあったり咳が出たりする
・筋肉痛や悪寒もあまり感じない
・風邪の場合、合併症もほとんどない
・くしゃみなどの飛沫感染が主な原因

風邪はインフルエンザと違い、症状は重くなく、鼻水や咳からはじまることが多いようです。

インフルエンザになっても授乳ができる条件

日本産科婦人科学会によると、ママが直接授乳や児のケアをおこなうためには、以下の3条件がそろっていることが必要です。

1.タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2.熱が下がって平熱となっていること
3.咳や鼻水がほとんどないこと

これら3条件を満たした場合、直接授乳することや子どもと接触することができます。

また、日本産科婦人科学会は3条件を満たしていないあいだは、ママと赤ちゃんは可能なかぎり別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が赤ちゃんに与えることをおすすめしています。ママがインフルエンザなどになった場合は、パートナーや両親などに協力してもらい、授乳を進めていけると良いですね。

以上のような感染予防行為はインフルエンザ発症後7~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状もない場合、他人に感染させる可能性は低いと考えられていますので通常に近い母児接触が可能となります。

授乳中にインフルエンザや風邪になったときの注意点

手洗いをしっかりおこなう

母乳をあげるときはおっぱいや乳頭をさわりますね。母乳をあげるときは手洗いをしっかりおこなわないとインフルエンザなどのウイルスが赤ちゃんの口に入ってしまいます。手洗いは風邪の場合でもインフルエンザの場合にも大事なことですね。忘れやすい親指や手首、指と指のあいだもしっかり洗い、母乳をあげているときに赤ちゃんにインフルエンザなどがうつらないように気を付けましょう。

マスクを着用する

母乳をあげるとき、赤ちゃんとの距離はものすごく近いですね。そのときインフルエンザウイルスが含まれた唾液などが飛んでしまうこともあります。そのため、インフルエンザや風邪にかかっているときで母乳をあげる際にはマスクをした方が良いのです。

日本産科婦人科学会ではさらに、インフルエンザとわかっていてなおかつ母乳育児をする場合、清潔なガウン(パジャマ)を使用すると良い、と書かれています。マスクはかわいい柄のものを選んでも良いですね。

また、マスクは全ての飛沫を防ぐことができるわけではありません。授乳中はできる限り、咳をしないように気を付けてください。

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インフルエンザの薬、風邪薬を飲んでも大丈夫?

市販の薬について

市販の薬の説明書をみるとほとんどの風邪薬に「母乳をあげている人は使用しないか、母乳をあげるのを避けること」と記されています。

また日本産科婦人科学会のガイドラインでは「母乳をあげているママが服用しても子どもへの影響はほとんどないが、絶対安全性がエビデンスとして示されているわけではない」としています。

これらはつまり、今のところ副作用は報告されていないものの長期的に見ると母乳をあげているときにインフルエンザや風邪の薬を飲んだ場合の研究結果が十分ではないので、なんともいえないということです。基本的には内服しても問題ない薬剤でもこのように記載されてしまうことが多いようです。

風邪薬に含まれるアセトアミノフェンやイブプロフェンは大丈夫ですが、無水カフェインは母乳から赤ちゃんに移行し、副作用をもたらす可能性があります。無水カフェインと書かれているとカフェインフリーかと勘違いをしてしまうかもしれませんが、実はコーヒーなどに含まれているものと同じなのです。薬として使用する際に「無水カフェイン」となります。

風邪をひいたけれど母乳をあげたいときもあります。使用するときは薬局の薬剤師の方に「母乳をあげているのですが」と聞いてから飲む方が安心ですね。なお、漢方薬にも副作用はあります。

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医師から処方された薬について

インフルエンザとわかった場合は主に「抗インフルエンザ薬」と呼ばれるタミフル、リレンザなどが処方されます。

インフルエンザや風邪になった際に、授乳ができる条件として「タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること」が含まれているので、タミフルやリレンザを服用しても問題ないでしょう。

心配な場合は、医師に自分が母乳育児をしているということを伝えてみてくださいね。

母乳育児中にインフルエンザ予防接種は受けられるか

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンといい、生きたインフルエンザウイルスは含まれていません。そのため母乳中にインフルエンザウイルスが出ることもなく、赤ちゃんにも影響はないとされています。

インフルエンザにかかると、風邪とは違って起きていられないほど症状が重くなることがあります。そのため予防のためにインフルエンザワクチンを接種しておいた方が良いでしょう。

ですが、インフルエンザワクチンを接種したからといって、インフルエンザにかからないわけではありません。油断せず、手洗いやマスクの着用、換気などに気を配ってくださいね。

医師によっても意見はさまざま

インフルエンザなどの感染症になったとき、母乳をあげて良いかお医者さんによってもいろいろな意見があるのも事実ですが、つらい症状を我慢して母乳をあげるのも大変です。やはり、一番良いのはインフルエンザや風邪にならないことですよね。

手洗いやマスクの着用のほか、1時間に1回は換気をしましょう。また、インフルエンザなどのウイルスは乾燥してしまった喉や鼻に住みつくものです。特に冬は空気が乾燥するので湿度にも気を付けてくださいね。

なお、インフルエンザウイルスは発症後長いときで2週間はインフルエンザウイルスを排出し続けるそうです。治ったからといって油断しないように気を付けてくださいね。

※この記事は2024年8月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

インフルエンザの発生状況に関する公表について、2023/2024シーズンは2024年5月に終了しています。2024/2025 シーズンは、2024年9月から開始予定です。インフルエンザは例年12月から3月にかけて流行がみられますが、2023年は9月時点で流行が始まっていました。ここ数年、季節を問わず散発的に患者数が増加しているため、一年を通じた感染対策が大切です。

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