【小児科医監修】完全母乳・完母とは?メリット・デメリットと完母・完ミ・混合の割合を紹介!いつからいつまで?保育園復帰はどうする?
妊娠中、「赤ちゃんが誕生したらできれば母乳で育てたい」と考えているママは多いのではないでしょうか。ここでは、完全母乳育児を成功させるための6つのコツと注意点を先輩ママの体験談を交えながらご紹介します。
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目次
完全母乳育児とは?完母のメリットと割合
完全母乳育児とは、文字通りママの母乳のみで子育てをすることをいい、完母とも呼ばれます。完母に対し乳児用の粉ミルクや液体ミルクと母乳を併用することを混合育児、母乳を与えず粉ミルクや液体ミルクのみで育児することを完全ミルク育児(完ミ)といいます。
赤ちゃんに与える栄養が母乳であってもミルクであっても、赤ちゃんは元気に育ちます。しかし、母乳にはミルクにはないメリットがあるため、産院などでは生後すぐは混合であっても、その後完全母乳育児を目指すように勧められることが多いようです。
完母のメリット
母乳には、赤ちゃんにとってもママにとってもメリットがあるといわれています。主なメリットは以下の通りです。
■赤ちゃんにとってのメリット
・赤ちゃんにとって最適な栄養を摂取できる
・免疫力の向上につながる
・おっぱいを吸うことで、舌やあごの発達につながる
・SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクが軽減される
・自然にママとスキンシップをとれる
■ママにとってのメリット
・産後の子宮回復を助けるホルモンが分泌される
・痩せやすい
・乳がんのリスクを軽減できる
・ミルク代がかからず経済的
完母の人の割合は?
こども家庭庁が全国の乳幼児(生後14日以上~1歳未満の乳児及び1歳以上~小学校就学前の幼児)を対象に行った「令和5年乳幼児身体発育調査(※1)」によると、完全母乳育児の割合は生後1ヶ月で34.5%、生後3ヶ月で38.7%でした。
過去20年余りのデータと比較すると、平成12年(2000年)から平成22年(2010年)にかけて完全母乳の割合は生後1ヶ月・生後3ヶ月ともに増加傾向にありましたが、令和5年(2023年)の調査で完母の割合が減少しています。月齢が進むにつれ、混合育児の割合は減少しますが、その一方で完ミの割合が増加します。
授乳期の栄養方法 | 平成12年(2000年) | 平成22年(2010年) | 令和5年(2023年) |
---|---|---|---|
完母の割合(生後1ヶ月) | 44.8% | 53.5% | 34.5% |
人工ミルクの割合(生後1ヶ月) | 11.2% | 6.1% | 11.7% |
混合栄養の割合(生後1ヶ月) | 44.0% | 40.4% | 53.8% |
完母の割合(生後3ヶ月) | 39.4% | 56.8% | 38.7% |
人工ミルクの割合(生後3ヶ月) | 30.2% | 13.2% | 21.6% |
混合栄養の割合(生後3ヶ月) | 30.5% | 30.0% | 39.8% |
完全母乳育児を成功させる6つのコツ
1.頻回授乳で母乳分泌を促す
赤ちゃんがおっぱいを吸うと、母乳を作るプロラクチンの分泌が活発になります。母乳の出が悪いと授乳を避けてしまいがちですが、授乳の回数を減らしてしまうとさらに母乳が出なくなってしまいます。母乳の分泌を促すためには、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうことが大切です。
2.ミルクの前におっぱいを吸わせる
赤ちゃんがミルクでお腹いっぱいになってしまうと、おっぱいを吸ってくれなくなることがあります。おっぱいを吸ってくれないからといって乳頭に刺激を与えなければ、母乳の生成が促進されません。完全母乳を目指す場合は、ミルクをあげる前に赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうようにしましょう。
3.しっかりと水分補給をする
母乳の8割は水分でできているため、授乳中は普段よりもこまめに水分補給をするようにしましょう。通常の成人は一日あたり1Lの水分が必要とされていますが、授乳中には2Lを目安に水分をとるようにしてください。
コーヒーや紅茶など、自分の好きな飲み物を飲んでリラックスする時間を作ってもよいかもしれませんね。カフェインが気になる場合は、ノンカフェインのハーブティーなどがおすすめです。飲み物だけでなく、みそ汁やスープなどの食事からも水分をとることができますよ。
4.しっかりと食事をとる
授乳中のママは、1日に2,300±300kcalほどのエネルギーが必要です。しっかりと食事をとらなければ、母乳の分泌や赤ちゃんの発育に悪い影響を与える可能性があります。産後のダイエットを考えているママもいるかもしれませんが、完全母乳に移行したいと考えている場合は、バランスの良い食事でしっかりとエネルギーを補給しましょう。
5.十分な休養をとる
出産後すぐは、赤ちゃんが何度も夜中に泣いて起きたり、頻繁におむつ替えをしたりと、ママはなかなか身体を休めることができないかもしれません。しかし休息や睡眠が足りないと、母乳がうまく生成されなくなり完母が難しくなることがあります。
なるべくパパや家族と育児や家事を分担して、休養をとるようにしましょう。周囲に頼りにくい環境の場合は、行政の子育てサポートなどを利用してみてはいかがでしょうか。
6.ストレスをためないようにする
ストレスがたまると母乳が出にくくなることがあります。子育て中はどうしてもストレスがたまることが多いものです。自分の好きなことをしたり、SNSやメールで同じ境遇の人と話をしたりして、上手にストレスを解消する方法を見つけられると良いですね。
完全母乳育児に移行しようと頑張り過ぎてしまうと、逆にストレスがたまってしまい、母乳が思うように出なくなってしまう場合があります。完全母乳育児を目指すことがストレスになるようであれば、しばらく頑張るのをお休みすることもひとつの方法ですよ。
完全母乳育児はいつからいつまで?
出産後のママや赤ちゃんの状態、母乳の分泌量や赤ちゃんの吸い方によって母乳の出方は異なるため、完全母乳育児の開始時期は親子によって違います。産院に入院しているあいだに完全母乳育児を始められるケースもあれば、生後2~3ヶ月頃に完全母乳育児へ移行するケースもあります。母乳の出方は個人差が大きいので、他の親子と比べる必要はありません。
完母の場合、授乳は赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけあげると良いとされています(※2)。頻回授乳を続けていると、赤ちゃんが母乳を吸うのに慣れ、母乳の分泌も増えてくるため、はじめはうまく授乳できなかったとしても心配しすぎる必要はないでしょう。
また世界保健機関(WHO)と国連児童基金(Unicef)は共同で、生後6ヶ月までは完全母乳育児をし、6ヶ月頃から2歳以降までは補完食(離乳食)と一緒に母乳育児を継続することをすすめています(※3)。
日本では離乳食を生後5ヶ月から6ヶ月に始めることが一般的です。離乳食を開始するまでが完全母乳育児の期間といえるでしょう。
完全母乳育児の注意点
十分に母乳が出るようになるまではミルクを併用しよう
最近は母乳育児に力を入れている病院が多く、母乳の良さを知る機会が多いですよね。赤ちゃんが生まれたらどうしても母乳だけで頑張りたいと考えているママもいるでしょう。しかし、まだ母乳の分泌が悪い時期に完全母乳育児にこだわりすぎると、赤ちゃんの栄養が足りなくなってしまうかもしれません。
出産した病院に入院しているあいだにたくさん母乳が出る人もいれば、母乳育児が軌道に乗るまでに2~3ヶ月かかる人もいます。それぞれの人の体質や環境によって母乳の出方は異なるため、あまり焦る必要はありません。赤ちゃんに必要な母乳が出るようになるまでは、ミルクを併用するようにしましょう。
初めての子を出産した病院は、母乳育児をかなり推進していました。母親学級でも母乳の良さばかりが強調されていたため、産後すぐに母乳が出ないときにはとても焦ったのを覚えています。産後赤ちゃんのおしっこがあまり出ないときにも、なかなかミルクをあげる気になれず、何度も赤ちゃんにおっぱいをくわえさせていました。
赤ちゃんの検査のときに看護師さんがミルクをあげてくれたのですが、それを知ったときには「赤ちゃんにおっぱいをあげられずにミルクを飲ませてしまった」とポロポロと涙が出ました。当時は「わたしは母乳育児を頑張りたいのだから勝手にミルクを与えないでほしい」と思いましたが、もしあのときにミルクを飲ませていなければ、我が子は栄養不足で障害などが出てしまっていたかもしれません。あのときの看護師さんには感謝してもしきれません。
保育園復帰予定のママは哺乳瓶の練習を!
完全母乳育児の赤ちゃんは哺乳瓶を嫌がることがあります。早期に保育園に復帰する予定があるママは、復帰の1ヶ月前頃から哺乳瓶で母乳やミルクを飲ませる練習をしましょう。
保育園によっては搾乳した冷凍母乳を受け入れてくれますが、なかにはミルクのみ対応という園もあります。完母で育っている赤ちゃんは、ミルクを嫌がって飲まないかもしれません。通う予定の保育園がミルクを利用する園の場合は、哺乳瓶で赤ちゃんにミルクを飲ませる練習をしておきましょう。
完全母乳で頑張りすぎる必要はない
母乳育児にはメリットが多いため、可能ならば完全母乳で子育てをしたいと考えている方も多いことでしょう。しかし母乳の出方には個人差があります。ミルクにも赤ちゃんに必要な栄養がしっかりと含まれているため、母乳のみで赤ちゃんを育てなければいけないと頑張りすぎる必要はありません。
母乳の分泌に関係するホルモンは繊細なので、ちょっとしたストレスによって母乳の出が悪くなってしまうことがあります。上手に周囲に頼りながら、できるだけストレスをためずに子育てに取り組めると良いですね。
※この記事は2025年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。