妊婦でも整体は受けられる?施術の時期、効果、注意点
妊娠中は、お腹が大きくなるにつれてだんだん腰や股関節周りが痛んだり、肩こりが気になったり、さまざまな身体の不調を訴える人が増えるといわれています。身体の不調を改善するために整体を検討する妊婦さんもいるでしょう。妊婦は整体を受けられるのか、気を付けることはあるのか、アンケート調査と体験談を交えて紹介します。
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目次
肩こり・腰痛・恥骨痛に悩む妊婦は多い
妊娠の経過ととともに、妊婦の身体は大きく変化していきます。妊婦の身体の変化といえば、大きくなるお腹をイメージする人が多いですよね。妊娠中は大きくなったお腹に血管が圧迫されて血のめぐりが悪くなり、腰や恥骨の周辺に痛みを感じる人が少なくありません。肩こりや足のむくみが気になる人もいるでしょう。
妊娠中は薬の使用に注意が必要なため、市販の薬に頼ることができません。このため、さまざまな身体の不調を我慢してしまう妊婦さんがいます。妊婦だから我慢しなければならないということはなく、原因を探り、適切に対処していくことが重要です。マッサージや整体などを受けたいという希望がある妊婦さんは、妊娠経過を診てもらっている産婦人科医とよく相談してから受けに行きましょう。
整体とは?
腰痛や肩こりといった身体の不調があるときに、マッサージや整体、リフレクソロジー、カイロプラクティックなどのサービスを受けたいと考える人は少なくないでしょう。マッサージや整体の専門店は、数多くあります。なかでも整体は、街中で専門店を見かける機会が多いサービスのひとつで、利用したことがある人も多いかもしれませんね。
整体は、機械を使わず手で行う技術を指す「手技」を用いたサービスのひとつです。整体は民間療法で、医学的に効果が認められていないものもあります。整体という言葉は明確に定義されておらず、現在法律で認められた資格はありません。このため、整体の実施方法は、サービス提供者によって異なる場合があります。身体の不調を緩和させる目的のものもあれば、リラクゼーション目的のものもあります。
整体と他のマッサージサービス・治療の違い
「整体師」の国家資格はない
整体は、機械を使わず手で行う技術を指す、手技のひとつです。手技には、法律で定められた資格(国家資格)があるものとないものがあります。「柔道整復」や「あん摩マッサージ指圧」、「はり」「きゅう」を提供する場合には国家資格が必要となります。「整体」「カイロプラクティック」「リフレクソロジー」は業界団体による資格は存在するものの、国家資格はありません。
国家資格がある柔道整復やあん摩マッサージは、国家資格を必要とすることから具体的な実施方法も細かく定められていますが、マッサージや整体は実施方法がサービス提供者により異なる場合があります。
サービスの名前が似ているものもあることから、柔道整復をわかりやすく整体と呼んでいる施設もあります。整体を受けたい場合には、まずは実施内容や資格の有無を確認しましょう。また安全のために、妊娠中にサービスを受ける場合にはかかりつけの産婦人科医の許可を必ず受けるようにしてくださいね。
理学療法士に身体をケアしてもらう方法も
妊娠中のさまざまなマイナートラブルを解決したい場合には、理学療法士にケアしてもらう方法もあります。理学療法士は国家資格で、整体院ではなく病院やクリニック、リハビリ外来で「治療」として理学療法を行っています。
そもそも理学療法は、病気やケガ、障害などによって運動機能が低下している場合に、さまざまな方法で物理的なケアを行うことを言います。「理学療法士及び作業療法士法」の第2条では、以下のように定義されています。
引用元:elaws.e-gov.go.jp「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
一部の病院や産院では、妊婦さんや産後のママ向けに理学療法士によるケアを行っているようです。理学療法は医師の指示のもと、国家資格を持つ理学療法士が行う治療なので、「整体院で施術してもらうのは少し不安」と感じている場合や症状がつらい場合には、検討してみると良いかもしれません。かかりつけの産婦人科医に相談し、理学療法士によるケアを受けることができないか確認してみましょう。
妊婦でも受けられる整体はある?
妊婦が整体を受ける際には、まず妊娠経過を知る産婦人科医に相談し許可をもらってからにしましょう。肩こりや腰痛の原因によっては、かえって症状が悪化することもあるため、注意が必要です。
妊婦にも整体を提供しているか
サービス提供者によっては、妊婦への施術を断っているケースもあるようです。整体を受けたい施設に、事前に妊婦でも整体を受けることは可能なのか確認しましょう。妊娠中でも妊娠週数によって整体ができない場合もあるため、あわせて確認すると良いでしょう。
【体験談】
肩凝りからの悪阻がひどく腰痛もあり、起き上がることもしんどくて毎日寝込んでいました。今まで行っていたマッサージ店は、妊娠中はダメだったので諦めるしかないと思いました。しかし主人が調べてくれ、マタニティ整体もある整体を近所で見つけてくれたので行きました。施術のおかげで肩凝りが治り腰痛もなくなりスッキリしました。
(愛飴/出産当時26歳)
お腹に負担をかけない施術 ができるか
妊娠後期になると、うつぶせになるのが難しくなります。妊娠後期に入る前でも、お腹を圧迫せずに整体ができるかを確認しておくと安心でしょう。
【体験談】
妊娠前から腰痛が酷いほうで、たびたび整体へ通っていました。妊娠初期は、腰痛はいったん落ち着いていました。中期に入り買い物へ出たり、出かけたりすることが増え、お腹も大きくなってきたため再び腰痛が始まりました。
妊娠前に比べ、痛い範囲も広く、歩くことすらままらなくなり、日常生活を送ることすら困難になったため、カイロプラクティックを専門とした整体へ行くことにしました。そちらの整体院には、マタニティコースがあり、低料金で妊婦でも可能な範囲の施術をしてくれました。基本体勢は、うつ伏せではなく、横に寝る体勢で、腰を中心に、身体全体の指圧でした。
(リリ/出産当時23歳)
マタニティ専用メニューがある整体も
最近ではマタニティ整体と呼ばれる、妊婦を対象とした専門のサービスもあるようです。妊娠中の肩こり、腰の痛みの緩和だけではなく、整体で身体を整えることで安産を目指す考え方があるようです。整体は提供者によって内容や考え方が異なるため、詳細は提供者に確認しましょう。
【体験談】
見ていただいた整体の方は、中年の男性でしたが、妊娠中のホルモンの影響や骨盤の歪みなど、とても知識の豊富な方でした。施術はもちろん仰向けか横向きで行いました。産後もしばらくのあいだ、通うことができてよかったです。妊娠中に普通の整体でみてもらうには、施術者に妊娠・出産の知識があるかどうかが大切だと思います。
(りょうまま/出産当時30歳)
先輩ママに聞いてみた!妊娠中に整体へ行ったことがありますか?
ままのて調査隊調べ(有効回答数123)
整体に行った妊婦は1割もいなかったようです。「行ってはいけないのかもしれない」という漠然とした不安があるのかもしれませんね。整体を受けたいと考えている場合には、かかりつけの産婦人科医に一度相談してみてくださいね。
妊婦さんが整体を受けられる時期
いつからいつまでという決まりはない
いつからいつまで整体を受けられるという決まりはありません。整体には明確な定義がないため、サービス提供者によって、妊婦が整体を受けられる時期や頻度の解釈は異なります。
安定期(妊娠16週目)に入ってから
妊娠中は安定期から整体を受けられるとするサービス提供者が多いようですが、なかには妊娠初期から臨月まで対応可能としている施設もあるようです。つわりなどの体調不良が落ち着いてくる安定期以降であれば、体調面から考えても安心かもしれませんね。
安定期だから大丈夫とは限らないことも
安定期にも個人差があります。妊婦のその日の体調にもよるでしょう。安定期だから大丈夫だと、自己判断しないようにしましょう。
妊娠中の整体の効果
整体は明確な定義がなく、サービス提供者によって実施内容は異なります。このため、整体を受ける目的や整体を受けることで期待できる効果も異なります。実施内容や期待できる効果については、サービス提供者に必ず確認してから整体を受けると良いでしょう。
一般的には、整体を受けることで、身体の不調の緩和効果に期待ができるといわれています。妊婦であれば、腰痛や恥骨痛、坐骨神経痛、肩こりや首の痛みが緩和されるならやってみたいですよね。整体の中には骨盤矯正を行なっている施設もあるようで、腰痛の緩和に期待できるかもしれません。
妊婦を対象にした整体では、安産目的でサービスを展開しているところもあるようです。興味があれば、実施施設に詳細を問い合わせてみてくださいね。
【体験談】
妊娠して、20キロ以上太ってしまったのが原因なのか、骨盤のズレのせいか、恥骨が激しく痛み、お腹が出てくるにつれて、歩いたり、寝たり起きたりの動作がつらくなったため、妊婦さん専用の整体に通い始めました。身体のむくみもあり、マッサージなどをして骨盤の歪みを戻しました。何度も通わないとまたズレるので、月に2回ほど行っていました。
(りーまま/出産当時18歳)
整体に行くときの注意点
医師の許可を得る
肩こりや坐骨神経痛などの原因によっては、症状が悪化するケースがあります。自己判断で整体を受けず、どのような症状で整体を利用したいのか、必ず医師に相談してからサービスを受けましょう。
無理な体勢のときは遠慮せずに申し出る
施術の体勢が苦しい、きついと感じたら、我慢せずに伝えましょう。
途中で気分が悪くなったら中止する
妊婦さんは、体調が急変することもあります。めまいやつわりなど妊娠特有の症状で、気分がすぐれない場合にはすぐに整体を中止しましょう。
腰を施術する際の注意点
うつ伏せにならない
うつ伏せはお腹を圧迫するため、妊娠中は注意が必要です。お腹が大きくなる前の妊娠初期や中期であっても、避けたほうが安心でしょう。
【体験談】
カイロプラクティックへ行きました。お腹が出ているので、うつ伏せの治療中にお腹に負担がかからないか心配だったのですが、施術台のお腹部分が移動して隙間ができるようになっていました。
(まゆみん/出産当時36歳)
腰を強く押しすぎない
妊婦の身体はデリケートです。同じ押し方をしたとしても、妊娠前よりも強い痛みを感じる人もいるようです。なるべく弱い力から始めてもらい、徐々に調整していくのが良いでしょう。
部分施術が可能か聞く
整体による身体への負担や刺激は、できるだけ少なくしたいですよね。気になる部分が限られている人は、施術する範囲を一部分に限ることができるかどうか相談してみると良いかもしれません。妊婦さんの要望に応じて部分施術を行ってくれる整体院もあるようです。
【体験談】
腰周辺には女性ホルモンに関わる神経が通っているとの説明だったので、事細かく、どこがどのように痛むのかを伝え、神経を刺激しない形で、確実に痛みを和らげてもらえるようにしました。
(リリ/出産当時23歳)
妊娠中の電気治療は医師と必ず相談を
整体の中には、「電気治療」とも呼ばれる、電気を使った機械を用いるケースがあるようです。電気治療についてもさまざまな見解があり、定義や内容はサービス提供者により異なることがあります。実施内容が異なる場合があるため、妊婦に与える影響やリスクも未知数の部分があります。
流産などの深刻なケースを引き起こす危険性も否定できないため、安全を考えて、妊娠中は避けたほうが安心でしょう。どうしても電気治療を受けたい場合には、必ずかかりつけの産婦人科医と相談しましょう。
整体の費用は?
整体は、サービス提供者によって実施内容が異なることもあり、1回あたりの金額もさまざまです。家から近く、無理なく通えて、金額も続けやすいところがあれば良いですよね。一度だけではなく、定期的に通う必要があるケースが多い点にも注意しましょう。
金額は1時間3千円程度から1万円以上するものまで、価格の幅も広いようです。初診料をとる場合もあるため、最初に実施内容とともに金額も確認しておくことをおすすめします。
妊婦が整体にかかる際に保険は適用される?
街中で見かける整体やマッサージで、保険適用可と書かれているお店もあれば、書かれていないお店もありますよね。どのような場合に、整体やマッサージで保険が適用されるのでしょうか。
まず国家資格が必要となる「柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師による実施が対象」となり、国家資格を持たない人による整体やマッサージは、保険の適用対象外になります。医療保険は療養に対して給付されるもののため、「疲労回復や癒し目的の場合には対象外」になるでしょう。
一方、腰痛やむくみがひどくて日常生活にも支障が出る、といった身体の不調を改善するため、国家資格者のもとで施術を受ける場合は保険適用となる場合がほとんどです。詳細は施術を受ける整体や加入している保険組合に確認しましょう。
【体験談】
私が通っていた整体は保険がきかず、1回の通院に1万円近くの料金が発生していました。安くないので、お金が気になってなかなか行けないということもありました。通い続けないと意味がないし、期間を空け過ぎてもいけないので、もう少しお手頃の価格でできれば良いのになと思っていました。
(りーまま/出産当時18歳)
妊婦が受けられる整体はどこにある?
妊婦が受けることができる整体は多くはありませんが、都内をはじめ各地域に存在しています。確認したら妊婦にもできるメニューがあったというケースもあるようなので、気になる整体があれば一度問い合わせをしてみると良いでしょう。最近では出張タイプの整体もあり、自宅まで来てくれる整体サービスもあるようです。
整体は、実施内容がサービス提供者によって異なるため、問い合わせ時には実施内容もあわせて確認しておくと安心でしょう。必ずかかりつけの産婦人科医へ相談し、許可を得てから整体を受けてくださいね。
整体には深刻な事故リスクがあることも理解しよう
国民生活センターや消費者庁の発表では、国家資格を必要としない一部の整体やマッサージ、指圧などによる事故の可能性に対して、消費者に注意喚起をしています。平成29年の消費者庁の発表では、治療期間が1ヶ月以上となる深刻な事故が存在することも明らかになっています。
引用元:www.caa.go.jp消費者庁には、「整体」、「カイロプラクティック」、「リラクゼーションマ ッサージ」などの法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術で発生した事故の情報が、1,483 件寄せられています(平成 21 年9月1日から平成 29 年 3月末までの登録分)。そのうち、治療期間が1か月以上となる神経・脊髄の損 傷等の事故が 240 件と全体の約 16%を占めています。
もちろんすべての整体、マッサージなどのサービス提供者に問題があるわけではありませんが、実際に事故が起こっているということは理解しておくと良いでしょう。妊娠中という特別な状況下でもあるため、まずは「サービスを受ける前にかかりつけの産婦人科医に相談する」ことは忘れないでくださいね。
妊娠中の整体に関する体験談
整体ではありませんが、筆者は妊婦さんにボディートリートメントをしたことがあります。通常はうつ伏せになることもありますが、妊婦の身体を考えて横向きと仰向けですべて施術をしました。
顧客の多くは強くもまないと施術を受けた気にならない、治った気がしないと訴える傾向があります。しかし通常の状態ならまだしも、妊婦の場合は要望に応えるのが難しいことが多かったです。
安全に整体を活用しよう
妊娠中は不安を抱える妊婦が少なくありません。妊娠を継続して出産に臨めるだろうか、無事出産できるだろうか、といった心配も多いでしょう。リラックスできるひとつの方法として整体を利用する人もいるでしょう。妊娠中という事情から激しい運動ができないこともあり、整体やマッサージを通して身体をすっきりさせることができたら嬉しいですよね。
妊娠中は注意点が多いですが、整体やマッサージを行ってはいけないわけではありません。妊娠経過を知るかかりつけの産婦人科医とよく相談した上で、安全に整体を活用してくださいね。