【産婦人科医監修】妊娠初期に自転車に乗っても大丈夫?流産の原因になるの?乗るときの注意点は?
妊娠初期に自転車に乗ることは、胎児やママの身体にどのような影響があるのでしょうか。外出や近所へのおでかけに自転車が便利ですが、流産や出血、胎児の障害を生むリスクが気になるところ。振動など自転車の利用が身体に与える影響と、いつまで乗れるかや、自転車に乗る際の注意点について解説します産婦人科医監修で解説します。
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目次
妊娠初期に自転車に乗っても大丈夫?いつからいつまで乗っても平気?
妊娠中、とりわけ妊娠初期に自転車に乗ってよいかどうかについては、多くの産婦人科医で判断が分かれるところです。自転車に乗ってもよいという意見もあれば、乗ってはいけないと指導している医師もいます。妊婦さんそれぞれの体調や事情にもよるため、妊娠何ヶ月から何ヶ月までなら大丈夫、とは考えないほうが良いかもしれません。
自転車に乗るのを控えるべきとされるのはどのような理由からなのでしょうか。
注意力が散漫になる
妊娠初期は自転車に乗ることを控えるべきだといわれる大きな理由は、転倒のリスクがあることです。妊娠初期は黄体ホルモンが多く分泌されているため、ぼうっとする、強い倦怠感がある、不眠になるなどの影響が出やすく、注意力が散漫になっています。信号を見落としたり後ろから来る車に気づかなかったりと、危険な状況に陥るリスクが高い状態なのです。
自転車で転倒したときに、ハンドルにお腹をぶつけてしまう可能性も無視できない問題です。妊婦の事例ではありませんが、ハンドルにお腹を強打し、外傷性腹壁ヘルニアを発症した症例もあります。なるべくなら自転車に代わる交通手段を見つけ、どうしても自転車に乗らなければならないときは、細心の注意を払って乗るようにしましょう。
腹圧がかかる
腹圧はお腹の中の圧力のことで、腹腔内圧とも呼ばれます。腹圧には骨盤底筋や横隔膜などが関係しており、息を止めてお腹に力を込めるときに高まります。日常では排便や排尿のためにいきんだときや、運動中に素早い動作をするとき、重たいものを持ったときなどが、腹圧が高まっている状態です。
自転車に乗っていると、ペダルを踏み出すときに腹圧がかかりやすくなります。坂道や向かい風があると、思わずぐっと力が入ってしまうこともあるでしょう。腹圧が高まると、流産や出血のリスクも上がります。こうしたリスクを考え、妊娠初期は自転車を避けたほうが良いといわれています。
お腹が張る
妊娠初期は、子宮の収縮によってお腹の張りが起こる可能性は比較的低い時期といわれています。しかし、妊娠15~16週頃までは、赤ちゃんと母体をつなぐ胎盤が完成していないため、不安定な状態です。自転車に乗っている振動で子宮が刺激されると、お腹が張り、切迫流産となる可能性が否定できません。
切迫流産は、流産の一歩手前の状態です。出血や子宮収縮、子宮頸管の短縮などが起こると切迫流産と診断されます。妊娠12週までの切迫流産では対処するための薬がないと考えられているため、処置は経過観察となります。後悔や不安を少なくするためにも、妊娠初期の自転車利用は慎重に検討したいですね。
骨盤が歪む
自転車のサドルの形やメンテナンスの状態にもよりますが、自転車に乗っていると骨盤が歪みやすいという意見があります。小さなサドルでは骨盤全体が乗せられず、サドルに接している中心部分から押し上げられるようになり、左右に骨盤が開いてしまうというものです。
また、背中が丸まった状態で運転すると、骨盤が傾き歪みの原因となりやすいともいわれています。骨盤のゆがみは切迫流産や便秘の原因となることがあります。むくみや逆子、難産につながることもあるので、注意が必要です。
妊娠初期に自転車に乗ると流産しやすい?
流産は妊娠12週までに起こることが多く、妊娠全体の8~15%の頻度でみられます。原因のほとんどは染色体の異常によるもので、ママの生活習慣などが影響していることは多くありません。
しかし、外傷によって流産してしまう事例はあります。転倒や衝突のリスクを考えると、妊娠初期に自転車に乗ることは、流産の可能性を高めるといえそうです。
また、流産と並行して自転車の振動による胎児への影響も気になるところですが、妊娠中の自転車利用が子どもの障害を誘発したという文献はみられず、自転車に乗らなかった人との差はないものと考えられています。
妊娠超初期に自転車に乗ってしまったら?
妊娠超初期とは、妊娠週数でいうところの3~4週目までを指します。卵子と精子が受精し、着床をすすめているころです。生理予定日付近と重なるため、基礎体温や妊娠検査薬でチェックをしている人がやっと妊娠に気付くかという時期で、妊娠に気付かない人も多くいます。
妊娠していることを知らないまま自転車に乗ってしまっていたら、振動などで胎児に影響が残っていないか心配になりますね。しかし、妊娠中は決して自転車に乗ってはいけないというわけではなく、乗ってしまったことを気にしすぎる必要はありません。ただし、妊娠が判明したら、その後の自転車の利用については医師の判断を仰ぎましょう。
妊娠初期に自転車に乗るときの注意点
ホルモンの影響で注意力が落ちてしまったり、自転車をこぐと腹圧の上昇や骨盤のゆがみにつながる可能性があったりと、妊娠初期に自転車に乗るリスクはあるものの、自転車はとても便利な乗り物です。
上の子の幼稚園や保育園の送り迎え、通勤や買い物と生活の必需品として欠かすことができず、自転車を利用したほうが負担が少ないというケースがあるのも事実です。やむを得ず自転車に乗るときは、以下の点に気を付けましょう。
サドルを低くする
適切なサドルの高さは、サドルにまたがったときに両足のつま先が地面に着く高さです。足の裏全体が着くのは低すぎ、片方しか着かなかったり指の先しか着かなかったりすると、サドルは高すぎです。指でしっかりと支えられる高さに調節し、転倒を予防しましょう。
坂道や段差は避ける
坂道を上る際に力いっぱいこぐと、腹圧が高まってしまいます。下り坂は思いのほかスピードが上がり、制御が難しくなることもあるため、坂道はできるだけ避けましょう。
段差での衝撃によってバランスを崩したり、お腹を刺激したりすることも考えられます。また、線路や側溝脇などはタイヤがはまりやすく、転倒の可能性が高まります。自転車に乗るときは、普段気が付かなかった道路のデコボコも気になるものです。多少遠回りでも安全な道を確認してから移動してくださいね。
雨や風が強い日は乗らない
悪天候時は自転車のバランスを崩しやすいものです。とくに線路やマンホールなど、金属部分は濡れるとスリップしやすくなるので気を付けてください。
風の強い日も、自転車があおられて転倒したり、ハンドルが取られて道路に飛び出してしまったりすることがあります。また、ビルの谷間などは風の通り道となり、突風が吹くこともあるのです。ほかの場所で風が吹いていなくても、曲がり角の先は風が強いかもしれないという意識が、事故を防ぐことにつながるかもしれません。
暑い日は乗らない
夏場の暑さが続くときは、屋外での活動はできるだけ避けたいものです。体調を管理するために、日中の暑い日差しのうちは外出を控え、涼しい時間帯に移動するようにスケジュールを調整してみるのもひとつの方法です。
スピードは控えめに
妊娠初期は、注意力が落ちたり反射的に動作するのが難しくなったりします。横からの飛び出しや転倒しそうな状況を防ぐためにも、スピードは控えめに運転しましょう。
信号が赤に変わりかけたときは、スピードを上げるのではなく停車するなど、ゆっくりと落ち着いたペースを心がけたいものです。出かけるときから、時間に余裕を持って外出できると良いですね。
動きやすい服装にする
妊娠中はゆったりとした服装が多くなりますが、ワイドパンツや裾の長いスカートは、タイヤに巻き込まれたり自転車を乗り降りする際の妨げになったりすることがあります。足まわりがすっきりした服装で乗るようにしましょう。
長時間乗らない
妊娠初期は子宮周辺の筋肉の状態が変化しています。長時間の運転は、骨盤周辺や股関節(こかんせつ)の筋肉に思わぬアクシデントを引き起こすことも考えられます。疲れがたまると注意力やとっさのときの反応も低下するため、長時間の運転は避けましょう。
脱げやすい履物やすべりやすい履物は避ける
サンダルやスリッポンなど、足先に引っ掛けるタイプの履物は自転車をこいでいる最中に脱げてしまうことがあります。また、底がすべりやすい履物では、自転車をこいだときにペダルから足が外れてしまうこともあります。
自転車の前輪に脚が接触したり巻き込まれたりして、転倒や大きなけがにつながりやすくなります。歩いているときの安全も考え、脱げにくく足にフィットする靴を選ぶようにしましょう。
妊娠初期に自転車に乗るときは安全を第一に考えて
法の改正もあり、最近では「自転車は車」という認識が浸透してきています。自転車に乗る際の安全も、高いレベルで求められるようになりました。安全に対する意識は常日頃から必要ですが、妊娠初期は体調の変化に注意してとくに安全な運転を心がけたいですね。