助産院とは?安全性や出産費用、メリット・デメリット

助産院は妊婦さん自身が主体となってバースプランをたてられたり、アットホームな雰囲気で分娩ができたりという特長がありますが、病院での出産と異なり医療行為を受けることができません。安全に出産するために、助産院で分娩できる条件や出産費用はどのように決められているのでしょうか。病院と異なる点やメリット、デメリットを解説します。

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目次

  1. 助産院とは?
  2. 助産院で出産・管理するメリットは?
  3. 助産院で安全に出産できる?
  4. 助産院での出産費用は?
  5. 助産院で出産・管理できる条件は?
  6. 産婦人科医と共同で管理すべき人は?
  7. 助産院で出産・管理できない人は?
  8. 自分にあった助産院を探そう
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助産院とは?

助産院とは助産師がお産の介助や、妊産褥婦、新生児の保健指導などを目的に開設された場所を指します。医療法第2条により入院床数は9床以下と定められているため、病院と比べて施設は小規模です。

助産師は助産師国家試験に合格して、厚生労働大臣からの免許を受けて助産行為を行っていますが、産婦人科医のように帝王切開や会陰切開、陣痛促進剤の使用といった医療行為は行うことができません。そのため助産院では、妊娠経過に異常がなく、正常と判断された場合のみ出産をすることができます。

また、助産院では分娩の最中に問題が発生した場合に備え、嘱託医師や提携医療機関を設置しています。もしものことがあったときも適切な処置が施せるように、医師との連携体制を整えているのです。

助産院で出産・管理するメリットは?

妊娠中の細やかなケア・サポート

助産院は正常な経過をたどる妊娠であれば、分娩時の介助だけではなく、妊娠中の定期健康診査の段階から妊娠経過をみることができます。助産師の自宅の一部を開放したようなアットホームな空間で、1対1のきめ細やかなケアが受けられることから、リラックスした状態で出産に臨むことができるのが特長です。

一般論としての保健指導ではなく、妊婦さん個人個人に対して食事や運動面の生活指導からママになるための心理的なサポートまで、妊婦さんに寄り添った指導を受けられるのが大きなメリットと言えるでしょう。妊娠中から継続して同じ助産師が関わる事で信頼関係が生まれ、妊婦さんも安心してお産に望めるようになります。

産後の細やかなケア・サポート

産後、妊娠前の身体に戻るまでの6~8週間を産褥期と言います。このあいだは家族や実家のサポートを受けながら、できるだけ安静にして過ごし、子宮や体力の回復に努めることが必要です。

しかし、周囲のサポートを受けるのが難しかったり、上の子や赤ちゃんのお世話があったりと、身体を休めるのが困難な状況があるのも事実です。このようなケースに対応できるように、助産院では産後の身体をケアするための「産褥入院」を実施している施設があります。

産褥入院は、新生児のお世話や母乳育児の指導をはじめ、栄養バランスが整った食事の提供や、施設によっては整体・アロマセラピーのサービスが受けられるなど、産後の疲れを癒すためのケアが充実しています。

助産院以外で出産した場合も産後の産褥入院を受け入れている施設や、産褥入院の助成が受けられる自治体もあるため、住んでいる地域でどのような施設やサービスがあるのか、確認してみるのはいかがでしょうか。

出産スタイルの選択

病院での出産スタイルは分娩台の上で仰向けに横になる分娩が主流です。しかし、助産院の多くは、分娩のスタイルを自由に決められる「フリースタイル分娩」を取り入れています。

フリースタイル分娩の多くは「横向きで産む側臥位分娩、四つん這いとなる分娩」がポピュラーでしょう。スクワットの姿勢をとる「蹲踞位分娩(そんきょいぶんべん)や、パートナーにつかまり立った姿勢で分娩する垂直位分娩(すいちょくいぶんべん)といったスタイルでの分娩もあります。

フリースタイル分娩では自分が楽だと感じる姿勢でお産ができ、普通分娩よりも赤ちゃんや母体にかかる負担が軽減されるともいわれています。医師主導ではなく、ママ自身がお産に積極的に参加する意味を込めて「アクティブバースプラン」とも呼ばれ、自然な分娩を望む妊婦さんの関心を集めていますよ。

また、助産院の中には産婦さんが希望すればどなたでも立会う事ができる所があります。上のお子さんを出産に立ち会わせたいと言って助産院を希望される方もいます。お産の時は産婦さんが安心しリラックスできる環境であることがとても大切です。普段から自分の信頼できる人に側にいてもらえることは、お産の最中とても心強いことですね。

助産院で安全に出産できる?

妊娠、出産の経過の大まかな流れは同じでも、ひとつとして完全に一致するお産はありません。ほとんどの分娩は問題なく安全に進行していきますが、どんなに熟練の医師や助産師であっても、多かれ少なかれ、出産は緊張をともなう現場なのです。

助産院ではアットホームで穏やかにお産に向きあうことができますが、その裏では助産師たちが万が一の事態に備えて徹底した安全配慮をすすめています。嘱託医師や病院との連携もそのひとつです。提携病院と連携し、定期健診を病院で受けることも推奨されています。また、妊婦さん自身がリスク管理を行えるよう、お産に対する理解を深める取り組みにも力を入れています。

助産院のメリットをいかし、産院の中で助産師が分娩に積極的に関与する院内助産院も存在します。助産師が介助を担うことで、妊婦の多様なニーズにこたえることができ、外来の待ち時間短縮や内容の濃い健診が期待できますよ。

病院が良いか助産院が良いかの判断は難しいところですが、どちらにしても100%危険や事故がないわけではありません。自身の妊娠経過や出産に対する考え方、医療行為が必要になった場合や産後のケアについて十分に比較し、どちらでお産するかを慎重に見極めるようにしましょう。

助産院での出産費用は?

助産院での出産費用は、出産スタイルや入院日数、家族も一緒に宿泊するかどうかなどの条件で細かく設定されています。助産院によって金額は異なりますが、40万~60万円の費用が相場のようです。

助産院での分娩には、病院と同じく出産育児一時金制度が適用されるため、実際の自己負担金額は少なくなります。妊婦健診は1回約5,000円(初診料別)で、自治体から支給される妊婦健診助成券が利用できます。マタニティ講座や母乳外来は別途3,000円~7,000円の費用が必要です。

分娩や妊婦健診にかかる費用は、出産育児一時金や妊婦健診助成などの手当てを差し引いた額が医療費控除の対象となります。また、助産院では健康保険が適用される医療行為を行うことはできません。緊急帝王切開や吸引分娩などの措置が必要となった場合は病院へ搬送されるため、助産院で保険適用されるような治療や検査は実施されないことが前提です。

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助産院で出産・管理できる条件は?

妊娠経過中継続して管理され、正常に経過しているもの

助産院では医療行為が行えないため、分娩が可能なのは医師による治療が想定されないことが条件となります。妊娠が判明してから定められた回数の妊婦健診を定期的に受けていて、妊娠経過において異常がないことが認められれば、助産院での分娩が可能です。

単胎・頭位で経腟分娩が可能と判断されたもの

双子や三つ子といった多胎妊娠は、分娩まで頭位であったとしても、一人目が外に出で空間が広がった瞬間にくるりと回転して逆子となってしまう可能性があります。低出生体重児であることも多く、ハイリスク妊娠に分類されるため助産院で分娩することはできません。

子宮の中に赤ちゃんがひとりで、逆子ではないことが確認されれば助産院での分娩が可能です。34~35週頃に逆子の場合は、提携病院での出産となります。

妊娠中、複数回、助産師と連携する産婦人科医師の診察を受けたもの

妊婦健診は助産院でも受けることが可能ですが、妊娠中期と後期にそれぞれ1回ずつ病院で医師による検査を受けることが推奨されています。妊娠中期では妊娠糖尿病や貧血の検査、エコーで胎盤の位置や羊水の量を確認するための検査が求められます。

また、妊娠後期においては中期における検査項目に加え、GBS(B群溶血性レンサ球菌)検査が行われることが望ましいとされています。

助産師、産婦人科医師双方が助産所または院内助産で分娩が可能と判断したもの

定期的な妊婦健診で妊娠経過に異常がなかったとしても、妊婦が低身長であったり、妊娠前のBMI値が基準値からはみ出していたりすると出産時のリスクが想定されるケースに該当します。こうしたケースでは医師と助産師が総合的に判断して、助産院での分娩が可能かどうか判断されます。

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産婦人科医と共同で管理すべき人は?

低身長、痩せすぎ・肥満、高齢出産の妊婦

身長が150cmに満たない妊婦さんや妊娠前のBMI値が18.5未満の痩せ型もしくは25以上の肥満の人は産婦人科医と共同で妊娠経過を管理し、最終的に助産院での分娩が可能かどうかを判断する必要があります。年齢が35歳以上の高齢出産の場合も、共同管理が選択されます。

産科以外の病気にかかったことがある妊婦

妊娠前から、産科以外の専門医による経過観察を継続して受けていて、妊娠中に症状の発現がない場合は助産院での分娩の可否を判断するために産婦人科医と共同で管理する対象となります。

産科の病気にかかったことがある妊婦(現妊娠中の発症を認めないもの)

以前の妊娠で軽度の妊娠高血圧症候群にかかっていたり、常位胎盤早期剥離や妊娠後期における早産の既往歴があったりする場合は、産婦人科医との共同管理が必要です。前回の分娩で吸引分娩や鉗子分娩となった場合も共同管理が必要なケースに該当します。

助産院での分娩は妊婦さん自身もリスクを理解しておく必要があります。医師や助産師との綿密な情報共有が欠かせません。

異常妊娠経過が予測される妊婦

出産後は新生児のケアも大切な管理項目となるため、新生児に異常をおよぼす可能性がある場合は、異常妊娠経過が予測されるケースに分類されます。

具体的には性器クラミジア感染症やGBS(B群溶血性レンサ球菌)といった感染症が陽性で治療を要した場合、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)に感染している場合があげられます。また予定日を超過して妊娠週数が41週を超えた場合も、医師との相談が必要です。

助産院で出産・管理できない人は?

合併症がある妊婦

もともと気管支ぜんそくや糖尿病に罹患している場合は、産婦人科医の管理のもと分娩するように求められます。心疾患や甲状腺疾患、膠原病や重症筋無力症といった自己免疫性疾患を持つ人も対象です。

婦人科疾患にかかったことがある、または合併症がある妊婦

子宮筋腫や子宮がん、子宮形態異常や子宮頸部高度異形成などが認められているときも、助産院での分娩は受け付けできないケースです。婦人科疾患は妊娠の判明とともに見つかることも珍しくありません。信頼のおける産婦人科医のもとで継続して経過を観察し、必要があれば治療を受けるようにしましょう。

母子感染の危険性がある感染症にかかっている妊婦

B型肝炎やC型肝炎、HIVといった感染症は母子感染のリスクが高くなります。母子感染を予防するために、B型肝炎では生後12時間以内にB型肝炎免疫グロブリンの注射が求められており、C型肝炎やHIVでは帝王切開が母子感染の予防に寄与するともいわれているため、産婦人科医師による管理が必要です。

産科的既往がある妊婦(妊娠中の発症・再発の可能性があり、周産期管理が必要とされるもの)

以前の妊娠が帝王切開だった場合は、胎盤の癒着や子宮破裂が起こりやすいことがわかっているため、産婦人科医の管理の対象となります。また、妊娠34週以前の早産や子宮頸管無力症の既往がある場合も助産院での分娩は難しいと言えます。

そのほか妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、子癇(しかん)、ヘルプ症候群は分娩時の急変が考えられ、産婦人科で経過を管理しながら分娩に臨む必要があります。

また血液型がRh(-)の人は、赤ちゃんの血液が母体に入り込んだために作られた抗体が胎児に移行すると、血液型不適合が起こります。胎児や新生児の新生児溶血性疾患を引き起こす事が考えられるため、産科医の管理のもと出産することが望ましいと言えます。

異常な妊娠経過の妊婦

産婦人科医による管理が必要なお産には、前置胎盤や34~35週の逆子、多胎妊娠といった予定帝王切開が前提となる分娩が該当します。また、常位胎盤早期剝離や巨大児、胎児発育不全などもこのケースに含まれます。

異常という言葉だけをみると該当する妊婦さんはお産に対して不安な気持ちを抱いてしまうかもしれませんが、自然な経腟分娩に含まれないものを異常妊娠経過と呼ぶため、気にしすぎないようにしてくださいね。

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異常な分娩経過の妊婦

分娩後の出血量が500mLを超えたり、分娩期の出血が2時間以上続いたりする場合は提携の医療機関への速やかな搬送が求められます。「助産業務ガイドライン 2014」では、血栓症が疑われるときや、胎児の心拍異常が起こったとき、羊水混濁や前期破水も産婦人科医へ早期に相談・搬送の対象として記載されています。

産褥期に異常がある妊婦

通常産褥期とは産後6~8週間までのことをさしますが、この記事内では分娩後2~24時間を産褥期としています。この産後24時間以内に、出血や呼吸困難、意識の消失、発熱といった全身症状があらわれたときは、産婦人科医への相談や搬送が行われます。下肢のむくみや痛み、下腹部痛や膀胱刺激も相談の対象です。

助産院で分娩後、心配な症状があらわれたときは助産師に伝えるようにしましょう。医療的な処置が必要な場合もありますよ。

自分にあった助産院を探そう

一口に助産院といっても、施設の雰囲気や設備、受けられるケアの内容は助産院によってさまざまです。助産師の個性が色濃く反映されるため、個人としての相性もあるでしょう。申し込み前の見学やホームページなどの情報を見て、どのようなお産にしたいか自分の希望を明確にして、希望に沿った助産院を探していきましょう。

助産師によっては、往診の対応で自宅出産を受け付けています。家族の意向も踏まえ、分娩時だけではなく産後の生活についてもイメージしてみると良さそうです。

助産院での分娩を希望していて、病院での出産が必要となったとしても、気を落としすぎないでくださいね。どのようなかたちであれ、ひとりの命を育み、生み出す妊娠・出産はとても尊いものです。生まれてきた命を慈しみながら育てられる喜びを感じていきましょう。母子ともに、健やかで穏やかな出産となりますように。


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