【産婦人科医監修】臨月の胃痛の原因と対策!胃痛は陣痛の予兆?ヘルプ症候群?
臨月に起こる胃痛の原因はさまざまで、生活習慣で改善できるものもあれば、医師による早急な手当てが必要なものもあります。多くの妊婦さんが悩んでいる胃痛について、痛みの原因と胃痛が起こったときの対策をみていきましょう。胃痛は陣痛の予兆ともいわれます。分娩が近づいているとされる根拠についても解説します。
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目次
臨月とはどんな時期?
臨月とは、妊娠週数36週0日目から39週6日目までを指します。40週0日目に設定された出産予定日を迎える月となり、赤ちゃんの身体の機能は十分に備わってきています。
予定日が近づくにつれ、ママの精神面や体調面の様子も変わってきます。お腹の重みや気持ちの揺れで不眠が続いたり、大きなお腹で股関節の痛みや腰痛が出たりすることもあります。また、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症がある人は、症状の悪化に注意したい時期です。
分娩に備えて、赤ちゃんの頭がママの骨盤の中におさまるのもこの時期です。これまで赤ちゃんに圧迫されていた胃が解放され、食欲が増したりお腹が張ることが増えたりという変化がみられます。
赤ちゃんが下がり、胃の圧迫感が軽くなる人がいる一方で、臨月に胃痛で悩まされることも珍しくありません。体調を整えて出産に備えたい臨月に、胃が痛いなどの症状があると心配になってしまいますが、症状に合わせた対策をとり、不安を解消していきましょう。
臨月の胃痛の原因は?
子宮による胃の圧迫
赤ちゃんが骨盤の中に納まる時期とはいえ、タイミングはそれぞれ違うものです。36週から胃がすっきりすることもあれば、39週となっても胃が子宮に圧迫されて、なかなか楽にならないケースもみられます。
胃の圧迫は、胃酸が逆流する逆流性食道炎を発症させることもあります。逆流性食道炎では胃痛症状はそれほど強くありませんが、胃部膨満感や胸やけ、喉の違和感といった不快症状をともないます。
ストレス・不安
胃腸のはたらきは自律神経と密接な関係があります。ストレスや不安があると自律神経のバランスが崩れやすくなり、その影響で胃痛や胃部不快感が起こることがわかっています。ストレスや不安が原因であらわれる胃の不調は、神経性胃炎や機能性胃腸症と呼ばれます。
自律神経の調整がうまくいかなくなると、胃酸の分泌が過剰になります。この分泌異常が胃痛や胸やけ、ゲップといった症状につながるのです。
出産が近づいてくると、赤ちゃんに会える喜びが大きくふくらむのと同時に、陣痛や産後の育児に対する不安を覚えることもあるでしょう。そうした気持ちから、臨月に胃が痛いと感じることもあるようです。
風邪・胃腸炎
胃痛の中には、ウイルスや細菌への感染が原因で起こるものがあります。感染性胃腸炎とよばれるもので、お腹にくる風邪とも表現されます。
胃痛のほか、嘔吐や下痢、発熱といった症状をともなうことも多く、ノロウイルスやロタウイルが流行する冬から春、アデノウイルスが流行する夏にかけてはとくに注意が必要です。
食中毒
激しい胃痛症状をともなうものに、食中毒があげられます。食中毒の原因となるのは感染性胃腸炎の原因と同じウイルスや細菌ですが、感染源がウイルスに汚染された食べ物と特定された場合は食中毒と診断されます。
食中毒の原因となる代表的なウイルスや細菌には、卵や食肉に付着しているサルモネラ菌や生の魚介類に多い腸炎ビブリオなどがあります。また、人から人に感染したノロウイルスが食品に付着することでも食中毒は誘発されます。
ヘルプ症候群
妊婦特有の胃痛にヘルプ症候群(HELLP症候群)があげられます。HELLP症候群はhemolysis(溶血)、elevated liver enzyme(肝酵素の上昇)、low platelets(血小板減少)の頭文字をとったものです。
発症すると常位胎盤早期剥離や腎不全、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)といった重篤な症状に陥りやすい疾患です。HELLP症候群の自覚症状としては突然起こる上腹部痛、みぞおち部分が痛む心窩部痛(しんかぶつう)や、嘔吐や食欲不振があげられます。
HELLP症候群は予後が不良なため早期の対策が必要ですが、妊婦高血圧症のなかでも蛋白尿がみとめられる妊娠高血圧腎症や子癇の患者さんが発症しやすい病気で、発症頻度はそれほど高くありません。全妊娠のなかでも0.2~0.6%、妊婦高血圧症候群の患者さんで4~12%なので、胃痛があるからといって不安になりすぎないようにしましょう。
臨月の胃痛対策!
胃にやさしい食事
臨月に胃痛があるときは胃にやさしい食事を心がけましょう。水分量の多いおかゆやにんじん、じゃがいもをやわらかく煮た野菜スープをゆっくりと少量ずつ食べると胃への負担が抑えられます。
やわらかく煮たうどんやそうめん、しらすや鯛といった白身魚も消化に良く食べやすい食品です。果物ではバナナやりんごが良いでしょう。柑橘類は胃の刺激となる酸を含んでいるので避けましょう。
胃にやさしい食事は、赤ちゃんが離乳食を始めるときのレシピと共通する部分が多いものです。覚えておくと、赤ちゃんが生まれてからも役立ちますよ。
軽い運動
胃の中に長時間食べ物が滞ってしまうと、胃もたれや胃酸の分泌異常の原因となります。軽い運動は血液の循環を良くし、胃腸の活動も活発にして胃の排出機能を高めてくれるといわれているのでおすすめです。
運動することで気持ちもリフレッシュするため、ストレス解消にもつながります。臨月に胃が痛いことに悩まされないよう、無理のない範囲で、ウォーキングや体操に取り組んでみてはいかがでしょうか。
空腹を避ける
食事をして食べ物が胃の中に入ると、食べ物を消化するために胃酸が分泌されます。ところが、ストレスなどの刺激を受けると自律神経がバランスを崩し、食事をするしないにかかわらず胃酸の過剰分泌が起こります。
もしも空腹時に痛みが出やすいのであれば、胃酸の過剰分泌が起こっているのかもしれません。過剰な胃酸の分泌は胃の粘膜を傷つけ、炎症や痛みを誘うため、胃の粘膜を保護することが大切です。
食べ物が胃の中にあると、胃酸が中和されたり胃の粘膜を保護するようにはたらいたりするので、胃の痛みが空腹時に集中しているようであれば、牛乳を飲んだり消化に良いものを食べたりして様子をみてみましょう。
深呼吸
深呼吸をすることで自律神経を整えて、ストレスからくる胃痛をやわらげる効果が期待できます。深呼吸は腹式呼吸で行い、副交感神経を刺激していきましょう。
腹式呼吸のポイントは、最初に息をゆっくりと吐き切ってお腹をへこませたら、鼻から息を吸いこんでお腹に空気をためていくことです。息を吸うことよりも、吐き出すことを意識して取り組んでみましょう。
一方、深呼吸をすることで胃痛が悪化する病気もあります。深呼吸をするときは自分の症状をしっかりと観察し、痛みがひどくなるようなら医師による診察を受けることをおすすめします。
水分補給
臨月の胃痛で食欲がないときでも、水分補給は欠かさないようしましょう。経口補水液やスポーツドリンクを取り入れ、脱水症状に陥らないようにすることが大切です。少しずつでも食べられるようなら、おかゆや野菜のコンソメスープなど水分を多く含む食事がおすすめです。こまめな水分補給につながりますよ。
妊娠中に脱水症状が起こると、めまいやふらつきの原因となることもあります。臨月は赤ちゃんへ送る栄養が増えるため、食べ物や飲み物を口にするのがつらいときはできるだけ早く医療機関を受診するようにしてくださいね。
食事は適量で
赤ちゃんが下に降りてきて胃の圧迫がやわらぐと、これまで抑えられていた食欲がぐんと増してしまうという妊婦さんは少なくありません。しかし、この食欲には要注意です。
妊娠中はホルモンの影響で、胃腸の運動が低下したり、筋肉が緩んだりしています。一度にたくさん食べてしまうと、はたらきが鈍っている胃腸に負担がかかるのです。臨月で胃が痛いときは少量ずつを複数回に分けて食べると、症状がやわらぐかもしれませんよ。
臨月の胃痛がひどいときはどうする?
胃痛が続くときは不眠・体調不良に注意
胃の痛みが続くと、夜も思ったように寝付けず、不眠に悩まされることも出てきます。臨月はただでさえ寝苦しいものです。胃痛が原因でさらに眠れないとなると、疲れからくる体調の悪化も心配されるところです。
寝る前にお腹を温めたり、温かい飲み物を飲んだりすると、お腹も気持ちも落ち着いてきます。胎教がてら、穏やかな音楽を聴いて眠りにつくのも良いですね。
嘔吐やひどい腹痛を伴うときは病院へ
胃痛や腹痛の中には、医師による診察が必要なケースもあります。特に、嘔吐や下痢をともなう胃痛は、感染性胃腸炎やそのほかの重大な病気が潜んでいる可能性が否定できません。
痛みの程度の感じ方は人それぞれなので、心配な場合は自己判断せずに、医師の診察を受けるようにすると安心です。
胃薬は必ず医師に相談してから
妊娠後期から臨月にかけてママがお薬を飲むと、成分が胎盤を通じて赤ちゃんに伝わり、赤ちゃんの身体の機能に影響を及ぼす可能性が指摘されています。そのため、どの成分も100%安全とはいいがたいものです。
とはいえ、胃痛によって食事が制限されたり眠りが妨げられたりしては、母子ともに健康状態が心配されます。適切な薬の使用が有益となることがあるので、医師の判断を仰ぎ、安全性が高い薬を処方してもらうようにしましょう。
市販薬や漢方薬は、安易に使用しないことが賢明です。薬を処方してもらうときは、かかりつけ医師に伝えるようにすると良いでしょう。
臨月の胃痛は陣痛の兆候?
分娩の際に分泌されるホルモンにオキシトシンがあります。オキシトシンは子宮収縮作用があるホルモンです。そのため、オキシトシンの子宮収縮作用が胃に影響を及ぼし、陣痛の兆候として胃痛が起こるという説がしばしば取り上げられています。
しかし、オキシトシンの作用はまだ解明されていないことが多く、胃痛と陣痛の因果関係にいたってははっきりしたことがわかっていません。ただし、オキシトシンが自律神経のはたらきになんらかの影響を及ぼしている可能性は示されており、胃痛とオキシトシンの関係については今後の研究が期待されるところです。
臨月の胃痛を我慢しすぎないで
胃腸症状の多くはストレスや不規則な生活に関連し、胃腸の運動機能が低下することで起こると考えられています。食生活や生活習慣を見直すことで、症状の改善が見込まれます。
生活を見直しても胃痛が治まらないときは、痛みを我慢せずに一度医療機関を受診して適切な対処法を医師と一緒に模索してみると良いかもしれません。
胃は食べることと直結している器官です。胃痛と前向きに向き合って、できるだけおいしく食べて健康な生活を維持していきたいですね。
※この記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。