【産婦人科医監修】妊娠初期のめまい・立ちくらみがひどい!原因は貧血?対処法は?
妊娠初期にめまいや立ちくらみに見舞われることがあります。貧血がよく知られる原因ですが、自律神経の乱れや脱水も理由となることがあります。めまいは動悸や転倒につながったり、重篤な病が隠れていたりするため適切な判断と対処法が必要です。めまいやたちくらみを起こさないために気をつけることを解説していきます。
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目次
妊娠初期とは?めまい・立ちくらみが起こりやすい?
妊娠初期は妊娠週数で4~15週、月数でいうと2~4ヶ月に相当します。お腹のふくらみは外見からは目立つほどではありませんが、身体の中ではホルモンの分泌量が増え、子宮の大きさが徐々に大きくなってきています。
呼吸数や血液の量も増え、頻尿の症状が出たりつわりがあらわれたりするのもこのころです。吐き気や立ちくらみに悩まされたり、眠気や全身の倦怠感におそわれたりすることもあります。これはホルモンの影響や、血液の増加による赤血球の割合の減少など、いくつかの原因が考えられます。
妊娠初期のめまい・立ちくらみの原因は?
鉄欠乏症貧血
鉄欠乏症貧血は血液中のヘモグロビン濃度の数値が低い状態です。鉄が不足するとヘモグロビンが生成できなくなり、鉄欠乏性貧血となります。
ヘモグロビンは酸素と結びついて、全身に酸素を運ぶ役割を持っている物質です。身体の活動に必要な酸素が不足し、めまいや立ちくらみが起こったり、動悸や息切れを感じやすくなったりするのです。貧血かどうかは血液検査でわかりますが、自覚症状がなく妊婦健診で検査をして初めて貧血を指摘されるケースもあります。
自律神経の乱れ
自律神経は交感神経と副交感神経をスイッチのように切り替えながら、血管収縮作用や心拍の亢進作用(こうしんさよう)、唾液の分泌などを調整しています。自律神経は、さまざまなホルモンが自律神経を刺激することで切り替わるようにできています。
しかし、妊娠すると胎盤や乳房を発達させたり、ストレスや不眠がでたりしてホルモンバランスが変わるため、自律神経がうまく切り替わらなくなることがあります。
自律神経の切り替えがうまくはたらかないと、めまいや頭痛、動悸などの症状があらわれます。肩こりや不眠などにもつながり、妊娠症状をさらにつらくしてしまうこともあるので、症状を強く感じるときはリラックスすることを心がけ、自律神経を整えていきましょう。
脱水症状
暑い季節の発汗や、つわりで水分がとれない場合など、身体の水分が不足することで起こるめまいがあります。めまいは脱水の初期症状のひとつのため、水分がしっかりとれていないときにめまいや倦怠感、ふらつきなどがある場合は注意が必要です。
脱水症状は、ひどくなると酸素不足になったり老廃物が身体の中にたまったりして、意識障害や昏睡状態に陥ることがある怖い病気です。妊娠中に起こりやすい血栓塞栓症へとつながる危険性もあります。
めまいのほかに、のどの渇きや尿量の減少などの症状がないかチェックし、経口補水液を飲むなどこまめな水分補給で対処しましょう。症状が改善しないときは早めに医療機関を受診するようにしてください。
低血圧・低血糖
低血圧は収縮期血圧が100mmHg以下のときを指します。低血圧は高血圧と比べ、無症状のことが多いのが特徴です。しかし立ち上がったり急な動作をしたりすると、めまいや立ちくらみといった一過性の低血圧症状があらわれることがあります。
低血糖は血糖値が70mg/dL以下で、動悸や手指の震え、めまいや目のかすみなどの症状がみとめられます。空腹時や食事の量が足りないとき、長い時間身体を動かしたときに症状があらわれやすくなります。
妊娠悪阻(にんしんおそ)
つわりは胃腸症状が中心ですが、妊娠悪阻では頭痛やめまいなどの脳症状が起こることがあります。水分も受け付けられず、脱水症状や栄養失調が心配される状態では、母体の安全を考えて入院措置がとられることもあります。
妊娠初期のめまい・立ちくらみの対処法は?
鉄分をしっかり摂取する
ヘモグロビンの成分となるヘム鉄は、動物性食品に多く含まれます。豚や鳥レバー、赤身の肉や魚、あさりやしじみなどの貝類が鉄分を多く含む食材です。大豆やひじき、ホウレン草や小松菜といった野菜類にも鉄分が含む食品があります。たんぱく質と野菜類をバランスよく食べるようにしましょう。
厚生労働省の目安では、1日のたんぱく質の摂取量の目安は、身体活動レベル II(ふつう)の女性で、18〜29歳が65~100g、30~49歳が67~103gです(※1)。妊娠中はこれに中期で+5g、後期で+25g追加した分量を摂取することが推奨されています(※2)。
たんぱく質はビタミンCを一緒に摂取すると、効率よく吸収を高めることができます。また、緑茶や紅茶、コーヒーなどタンニンを含むものは、鉄分の吸収を阻害してしまうため注意が必要です。
ヘム鉄を多く含むレバーですが、レバーには過剰摂取が胎児の奇形を招くとされるビタミンAも含まれています。しかし、ビタミンAが欠乏すると眼球乾燥や失明の可能性もあるのです。栄養素は相互に関係しあって作用するため、適量にバランス良くとることが大切です。
立ち上がるときはゆっくり
妊娠初期に立ちくらみを起こして転倒すると危ないですね。座った状態から立ち上がるときや、寝ている状態から起きるときには血圧が下がりやすくなります。急激な血圧の低下を避けるために、ゆっくりと立ち上がるようにしましょう。
自律神経が乱れても、血管の収縮がうまくはたらかなくなり低血圧が起こります。やはり、めまいやふらつきにつながるので疲れやストレスをためすぎないようにすることも対策につながります。
倒れないように何かにつかまる
めまいは突然やってくることもあります。転倒すると、妊娠への影響が心配です。とっさのときに対処できるよう、電車やバスに乗ったら吊革につかまったり、階段の上り下りは手すりや壁で身体を支えたりすることを意識してください。
お風呂場やトイレなどでも、手すりを活用すると安心です。公園のベンチやシートなど、つかまる場所がないところでは、膝をついたり一緒にいる人の手を借りたりすると血圧の低下を予防できます。
倒れそうになったらすぐにしゃがむ
ふらつきを感じたらその場にしゃがんで低い姿勢になりましょう。座った状態で目が回るような感覚が起こったら、横になったり目を閉じて光の刺激をさけたりすることで症状が改善される場合もあります。
つらいときは無理せず休む
なにかの作業をしているときは無理をせずに、作業を一時中断することも大切です。運転中などにめまいが起こると危険なので、路肩に車を停めて安全を確保するようにしてください。
症状がひどいときは病院へ
めまいの原因が自律神経や一時的な血圧の低下ならば、休息をとることで症状はおさまります。めまい以外に症状がなく、症状が落ち着くようであればそれほど心配する必要はありません。
しかし、脱水症状や脳の病気がめまいの原因の場合は、早急な処置が求められます。耳の奥の器官が原因で起こるめまいは難聴につながることもあります。ひんぱんにめまいにおそわれる場合や、慢性的にめまいを感じるときは早急に医療機関を受診しましょう。
妊娠初期に気をつけることは?
規則正しい生活
睡眠リズムが乱れると、不眠や睡眠の質の低下を招きます。夜ふかしや朝寝坊はせず、できるだけ決まった時間に寝て起きる、規則正しい生活を心がけましょう。
バランスの良い食事や軽く身体を動かすことも、血液のめぐりを良くしストレスの抑制にもつながります。妊娠初期のつわりがつらいときの無理は禁物ですが、つわりが落ち着いているときはバランスよく栄養をとるようにしましょう。
喫煙しない
喫煙習慣はめまいだけではなく、妊娠の継続そのものに良い影響を与えません。血管が収縮することで血液や酸素の供給が不足し、流産や早産につながる可能性が非喫煙者よりも1.4~2倍に上がります。さらに妊娠中に喫煙していると、生まれてくる赤ちゃんは平均的な出生体重より低体重となる傾向も見られます。
赤ちゃんを望んでいる場合は妊娠前からの禁煙を心がけ、もしも妊娠がわかったときに喫煙しているようであれば、すみやかに禁煙しましょう。
飲酒を控える
妊娠中のアルコールは、胎盤を通じて赤ちゃんに届きます。これまではアルコールが胎児の成長にどのようにかかわっているのか、解明されていませんでしたが、近年の研究成果から、アルコールの分解によって作られる物質が、赤ちゃんの正常な成長を阻害しているのではないかと考えられるようになりました。
妊娠中にアルコールをとることで赤ちゃんに生じる症状は「胎児性アルコール症候群(FAS)」と呼ばれます。FASを発症すると、知能障害や発達障害、目が小さく唇が薄いといった特徴的な顔貌(がんぼう)があらわれる可能性があります。臓器の異常や行動の異常がみとめられることもあり、家族の今後の生活を守るためにも飲酒は控えましょう。
カフェインの摂取を控える
カフェインの摂取については一般的に控えるよう指導されます。これは、カフェインの摂取と死産や胎内死亡との関連が指摘されているためです。その一方で、カフェインの摂取は胎児に影響しない、妊娠糖尿病の抑制に貢献するという研究報告もあります。
カフェインの摂取は研究者によって意見が分かれるところですが、カフェインを含むコーヒーや紅茶、ウーロン茶は、飲むことによってリラックスする効果もあるため、飲まないことがストレスにつながらない程度に、摂取を控える方が賢明と言えそうです。
最近ではさまざまなカフェインレスコーヒーやカフェインレス紅茶が販売されています。香りやテイストがカフェインを含んだものに近いため、安心して飲むことができますよ。
激しい運動を控える
妊娠初期は胎盤が完成していない時期です。一般的に運動を始める人が多い時期は安定期と呼ばれる妊娠15~16週頃からとされています。妊娠中に身体を動かすことは血流の改善や体重管理に役立ちますが、転倒する可能性や人との接触があるような激しいスポーツ、うつぶせの姿勢になる運動は避けたほうが良いでしょう。
妊娠中に適している運動はウォーキングや水泳などの有酸素運動です。妊婦向けに開校されているマタニティビクスやヨガ教室に通ってみるのもおすすめです。
運動を始めるときは、妊娠に異常がないかをしっかりと確認する必要があります。事前に医師に相談してから始めるようにしてください。また、集中しすぎると酸欠状態になり、めまいを引き起こすことにつながります。水分補給は欠かさず、適度な休息を心がけましょう。
無理な姿勢をしない
手を伸ばしたり背伸びをしたりすることは、転倒のリスクを高めてしまいます。また、重い荷物を持つと腹圧がかかり、出血の原因となることもあります。妊娠初期はホルモンの影響で筋肉が緩みやすく、腰や股関節を痛めてしまう可能性も否定できません。
赤ちゃんとママの身体をいたわるためにも、無理な姿勢は避けるようにしましょう。パパや家族の手を借りたり、道具を使ったりして対処してください。
妊娠初期にめまいを感じたら無理せずに
めまいは身体からのサインです。身体からの訴えに耳を傾け、めまいや立ちくらみ、ふらつきを感じたらそのときにしていることを中断して休息をとりましょう。
めまいには重篤な病が潜んでいる可能性もあります。大したことはないと見過ごさず、生活習慣を見直し、心配な場合は医師に相談することが大切です。
※この記事は2023年12月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。