妊婦が市販の弁当や冷凍食品を食べると死産のリスクがあがる?レトルト食品は?最新の研究発表をもとに解説

妊娠中は食への関心が高くなり、手作りや無添加にこだわる人も多いでしょう。その一方で体調がすぐれないときや時間がないときなどは、市販の弁当や冷凍食品があると助かりますよね。便利な調理済み食品ですが、妊娠との関連について気になる研究結果が発表されました。名古屋市立大学に拠点を置く研究センターによる現在の見解をご紹介します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 妊婦に関する新たな研究結果を発表
  2. 調理済み食品の摂取と死産の関連性
  3. カフェインの摂取と死産の関連性
  4. 妊婦の調理済み食品の摂取 今後の展開
  5. 妊婦さんにおすすめの食事は?
  6. 調理済み食品は頻度に注意して利用しよう
  7. あわせて読みたい

妊婦に関する新たな研究結果を発表

名古屋市立大学の発表

名古屋市立大学には、環境省が実施しているエコチル調査の研究拠点として愛知ユニットセンターが設置されています。そこで杉浦真弓教授、玉田葉月特任助教たちの研究チームは、妊婦の調理済み食品の摂取頻度と妊娠帰結(にんしんきけつ)との関連についてを調査しました。

調査の結果、市販の弁当または冷凍食品の摂取頻度と死産とのあいだに関連があることが明らかとなり、研究成果は令和4年2月20日付でMDPIから刊行されている栄養学分野の学術誌「Nutrients」に掲載されています(※1)。

発表された内容は研究チームによる見解であり、環境省や国立環境研究所が公式に示しているものではありません。今後さらに詳しい研究が待たれます。

※妊娠帰結…妊娠がどのような結果になったのかを意味し、本調査では死産、早産、SGA(在胎不当過小、子宮内胎児発育不全)、低出生体重としています。

エコチル調査について

環境省が実施しているエコチル調査は「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせてつくられた言葉で、正式名称を「子どもの健康と環境に関する全国調査」といいます。環境中の化学物質が子どもの健康に与える影響を明らかにすることを目的に、約10万組の親子データを集め、解析・研究を進めています(※2)。

この大規模な疫学調査は2011年にはじめられ、2027年までの継続が予定されているものです。当時お腹の中にいた赤ちゃんが13歳になるまでのあいだ、健康状態を定期的に確認し、環境要因が子どもたちの成長・発達に与える影響を調べています。

調査は国立環境研究所を中心に全国15地域の大学などに設置されたユニットセンターと共同で実施しており、愛知ユニットセンターも研究拠点のひとつです。

各ユニットセンターではそれぞれの研究が進められており、今回の研究成果のほかにも犬の飼育と子どもの発達との関連や妊婦の染毛剤利用と子どものアレルギーの関連など、2021年7月までに197の成果が発表されています。

調理済み食品の摂取と死産の関連性

近年はライフスタイルの変化から食の在り方が多様化し、お店で調理した食品のテイクアウトや宅配ニーズが増加しています。ところがこうした調理済み食品を妊娠中に食べることにより、お腹の赤ちゃんにどのような影響があるのかは明らかにされていませんでした。

そこで、杉浦教授たちは妊婦の調理済み食品と市販の飲料の摂取頻度と妊娠帰結との関連について94,062組の親子から得られたデータをもとに研究を開始しました。ここでいう調理済み食品とは、市販の弁当、冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品、缶詰食品を指します。

市販の弁当・冷凍食品

市販の弁当または冷凍食品の摂取頻度が週に1回未満の妊婦に比べて、週1回以上は摂取する妊婦のほうが、妊娠12週以降の死産の確率が高いことがわかり関連性が認められました(※3)。なお今回の調査では初期流産との関連について調べておらず、関連は不明です。

レトルト食品・インスタント食品

市販の弁当や冷凍食品の摂取頻度と死産の関連が示された一方で、レトルト食品やインスタント食品、缶詰食品の摂取頻度と死産の関連性はみられませんでした。

原因やメカニズムは明らかになっていない

今回の調査では調理済み食品が妊娠結果に影響をおよぼす可能性が示されているものの、死産を引き起こす原因物質やメカニズムは明らかにされていません。原因が食品に含まれる化学物質にある可能性も考えられますが、エコチル調査からその原因を導くには限界があるのも事実です。

カフェインの摂取と死産の関連性

妊娠中のカフェイン摂取が早産や低出生体重につながるということは、一般的に知られていることではないでしょうか。今回の調査でも、カフェインを含むコーヒーやお茶類の摂取と死産、早産、SGA、低出生体重に関連があることが示されています。

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妊婦の調理済み食品の摂取 今後の展開

今回の調査では、母親の年齢、体格、喫煙歴、飲酒歴、学歴、収入、体外受精、過去の妊娠、妊娠合併症、労働環境、エネルギー摂取量などの要因の影響を考慮して解析を行っています。

しかし、調理済み食品以外に食べたものや生活習慣からの影響を完全に否定するものではありません。今後は尿や血液、臍帯(さいたい)などを用いて詳しく検討する必要があると結ばれています。

妊婦さんにおすすめの食事は?

妊娠中はカロリーや塩分の摂りすぎに注意し、タンパク質や鉄分、ビタミンCや葉酸などをバランス良く摂るよう工夫しましょう。

いろいろな食材を取り入れやすいのが和食の献立です。具だくさんの味噌汁や炊き込みご飯なら一品でも満足感が得られます。出汁(だし)をきかせると塩分は控えめでもおいしくいただけますよ。

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調理済み食品は頻度に注意して利用しよう

妊娠中は体調がすぐれない日もあり、市販の弁当やお総菜、冷凍食品に頼っていたという妊婦さんもいるのではないでしょうか。今回の研究結果は、こうした調理済み食品の摂取について後ろめたさを抱いてしまうものかもしれません。

しかし、調理済み食品を食べること自体が悪いわけではないのです。調査は摂取頻度によって妊娠の結果に影響が出る可能性を示したものであり、これまでの食生活を心配しすぎることはないでしょう。

医療は日々進化しており、情報も常に更新されています。最近では妊娠中の体重管理についても新たな知見が示されました。研究を蓄積することで、妊娠中の望ましい過ごし方が新しく示されているのですね。新しい情報に敏感になると同時に、その時々の見解に振り回されすぎないことも大切なのかもしれません。バランス感覚を持って妊娠生活を楽しみたいですね。

※この記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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