新生児マス・スクリーニングとは?費用はかかる?再検査になることもある?【小児科医監修】
日本で生まれる赤ちゃんのほぼ100%が受けるといわれている「新生児マス・スクリーニング」とはどのようなものなのでしょう。また、最近聞かれるようになった「タンデムマス・スクリーニング」との違いとは何でしょう。赤ちゃんが生まれたらすぐに行う検査なので、検査の内容や費用について事前にチェックしておくことをおすすめします。
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目次
新生児マス・スクリーニングとは?
新生児マス・スクリーニングとは、世界各国で行われている新生児の先天性代謝異常症などの検査のことを言います。マスは集団、スクリーニングは検査を意味します。生後早い時期に採血を行い、先天性の病気がないかをチェックするのです。
新生児マス・スクリーニングで早期に病気を発見することで、症状があらわれる前から早期治療に取り掛かれます。早期治療によって生命の危機を回避し、重い症状や知能の遅れなどを防止することができるのです。
タンデムマス・スクリーニングとは?
新生児マス・スクリーニング検査では2つのホルモンの病気と4つの先天代謝異常症の6つの病気を早期発見できましたが、タンデムマス法という検査方法が見つかり、より多くの病気が見つけられるようになりました。
自治体によって対象となる病気の種類は16~22種類と違いがありますが、平成26年度より日本全国でタンデムマス・スクリーニング検査が受けられるようになり、新生児マス・スクリーニングより多くの病気が発見できるようになっています。
タンデムマス・スクリーニングの仕組み
タンデムマス・スクリーニングの主な内容や費用は以下のとおりです。
日本で生まれるほぼ100%の赤ちゃんが受ける検査
新生児マス・スクリーニング検査と同様、強制ではなく、医療機関側からの説明があって受ける任意の検査ですが、日本で生まれるほぼ100%の赤ちゃんが受けています。
検査は産科医療機関と検査施設が連携して行うシステムなので、自宅分娩のときはどこで検査ができるかをあらかじめ助産師に聞いておきましょう。
外国で生まれた赤ちゃんで、日本で検査を行いたいときは、自費で検査を受けることができるので、かかりつけのお医者さんに相談してみましょう。
検査方法
医療機関で生後5日前後に足の裏から少量の採血を行います。それを特別な血液ろ紙にしみこませ、検査機関に郵送し、微量の成分を測って病気の可能性を探ります。検査結果が出るまで日数が掛かるので、通常は1ヶ月健診のときに医療機関で結果を説明してもらえます。
ただし、再検査のときや精密検査が必要なときは、1ヶ月を待たずに医療機関から連絡が入ることがあります。
検査で見つかる主な病気
タンデムマス・スクリーニング検査で発見される先天代謝異常症とは、アミノ酸、有機酸、脂肪酸などの身体に必要な栄養素をうまく代謝できない病気です。内容に応じ、特殊ミルクやビタミン剤を与え、食事制限、薬の投与などの治療を行います。先天代謝異常症は大きく分けて下記の3つのグループに分けられます。
・脂肪酸代謝異常症
炭水化物からのエネルギーが少なくなったら、脂肪が代わりのエネルギー源となるのですが、 脂肪酸代謝異常症だとエネルギーが上手に作れず、当分が足りなくなったときに急激な低血糖や急性脳症などの症状があらわれます。
・有機酸代謝異常
ヒトの身体は弱酸性に保たれていますが、アミノ酸が分解する過程でできる有機酸という酸性物質を代謝できないと、それらがたまることにより身体が酸性に傾きます。呼吸が荒くなる、急性脳症のような症状があらわれます。
・アミノ酸代謝異常症
通常は食事から摂ったタンパク質をアミノ酸に分解して、身体に必要なものに変えていきますが、この分解がうまくできないためにアミノ酸がたまり、発達遅延などの症状があらわれます。
病気はどのくらいの割合で見つかる?
アミノ酸、有機酸、脂肪酸の代謝異常症のうち、発見される病気によっても異なりますが、すべての種類の病気をあわせると約9000人に1人の割合で何らかの病気が見つかるといわれています。
日本の年間出生数(約100万人)と同じ数の赤ちゃんが検査を受けたと仮定すると、毎年約110人の割合で新生児が何らかの疾患を持つかもしれないという計算になります。
検査を受けるメリットとデメリット
検査を受けるメリットは、病気で異常が発生する前に事前に対処を行えることです。無症状の病気でも、軽い風邪などをきっかけに症状があらわれることがあります。代謝異常症で重症なものは命の危険があるので、早めの発見が必要です。早めに対処することで、病気を持たない子どもとほとんど変わらない生活をすることができる可能性もあります。
デメリットとしては赤ちゃんの足からわずかな血液を採らなければならないことです。
検査にかかる費用
検査料は公費負担ですが、採血料や検体送付料は自己負担です。採血料や検体送付料は医療機関によって異なり、1,000円以下で済むところもありますが、分娩費用に含まれている場合や、2,000円以上かかるところもあります。
産科医療補償制度や出産育児一時金などによって実質負担がないこともあるので、医療機関に確認してみましょう。自治体によっては里帰り出産でも検査費用を都道府県が負担してくれることもあります。
マス・スクリーニングの検査結果について
検査結果はどうやって知る?
検査結果は対象疾患の範囲内で主に、正常値、再検査、要精密検査と分けられます。異常がなければ、通常1ヶ月健診の際に採血した医療機関で結果を聞くことができます。再検査や精密検査が必要なときは、1ヶ月を待たず個別に連絡がある場合が多いです。
1ヶ月健診までに連絡がなければ、健康というわけではなく、対象疾患以外の病気の可能性も十分にあるので、赤ちゃんに何らかの異常があるときは、速やかに医療機関を受診しましょう。
再検査と要精密検査
再検査は病気が強く疑われるわけではないのですが、採血時にさまざまな外因的な影響を受けていないかなどを確認するために行われます。一方、要精密検査のケースはすぐに病院で精密検査を行うのが望ましいという状態なので、精密検査の知らせを受けたら早めに受診しましょう。
再検査イコール病気ではない
再検査だからといって、必ず病気が確定されたというわけではありません。また、要精密検査になったときでも、再検査の結果、異常なしと判断されることもあります。要精密検査はあらかじめ受診日を指定されることが多いので、遅れることなく、指定された日にちに行くことをおすすめします。
マス・スクリーニングの検査結果は母子手帳をチェック
マス・スクリーニングの検査結果は通常、母子手帳に貼ってもらえます。検査結果で異常がなくても、今後の成長で何か関わるようなことがあれば、母子手帳をチェックするようにしましょう。任意ではありますが、ほぼ100%の赤ちゃんが検査を受けています。赤ちゃんのためにも検査を行い、何かあれば早めに対処することが大切です。